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シェフが繋ぐ食の未来


同様の被害はフランスなど他国でも問題になっているのかと問うと、「全てを知っているわけではないけれど、国が山の管理をしっかりしているために、食糧不足で人里に降りてきてしまうことはない」との答えが返ってきた。しかしその一方、フランスでは熊がすでに3~4頭しかおらず、絶滅寸前だという。日本はこんなに小さな国でありながら、里山には動物の影の濃い国なのである。



ジビエの“美味しい加工品”を開拓


そんな折、環境問題を考えながら、ジビエの精肉販売、食肉加工を行う九州の会社「椿説屋(ちんぜいや)」との出会いがあった。きっかけは、室田氏がクラウドファンディングのMakuakeで「鹿節」という面白い商品を見つけたことだった。

世界のベストレストラン50で1位に輝いた「noma」のレネ・レゼピシェフが、和食の旨味に共感し鹿節を開発したというニュースをネットで見つけ、再現したのが始まりで、鰹節ならぬ鹿節が完成した。西洋料理に鰹や昆布の出汁を合わせると、どうしても生臭さが拭えないが、鹿肉を燻し、熟成させた鹿節ならその心配がない。

室田氏は、たとえばそれを鰹節のように薄く削って、鯛のマリネなどにからめているそうだ。この珍しい鹿節をきっかけに信頼関係を築き、精肉そのものも仕入れるようになり、コラボレーション企画が始まった。

「20席あまりのレストランでは、ジビエを普及させるにも限界があります。広く、一般の方々に食べてもらえる商品を開発したいと考えているときに、ちょうど、椿説屋さんもそれを考えられていたんです。他の食肉に比べて、ジビエは加工品というジャンルがすっぽり抜けている。だから両者のコラボレーションはまったく自然の流れでした」と室田氏。

そして完成した商品はすべて無添加の「猪肉と南仏野菜のトマト煮込みハンバーグ」、「鹿肉と森のキノコの赤ワイン煮込みハンバーグ」、「猪肉餃子~ローズマリー&黒胡椒~」、「鹿肉餃子~カトルエピス~」の4種類。椿説屋の高田健吾氏が設立したアグレボヘルスフーズが販売する。

レトルトで温めるだけの商品なのに、どれも、ジビエの風味をしっかり生かし、かつ、万人に好まれる完成度の高い味に仕上げているのは、さすがシェフ渾身の力作だけのことはある。

「老若男女に喜んでもらえるメニューとして、最初から無添加のハンバーグを考えていました。ただ、10人20人の料理を作るのと、100人~200人の料理を作るのは全く別のこと。そのあたりのレシピへの落とし込みの苦労はありましたが、無添加ということでは何も問題なかったですね。レストランで作っている料理は当然無添加ですから」

レストラン以外に広く一般にジビエの魅力を広げていくことが「自分の使命だと思っている」という室田氏は、商品の完成をとても喜んでいる。

文=小松宏子

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