ザ・リッツ・カールトン日光 人と自然に癒される「冬旅」へ

ザ・リッツ・カールトン日光


このホテルでは、「朝食がおいしいと、昼も夜もここで食べたくなるから」と朝食を大切にしている。そこに欠かせない卵も地元産のもので、ターンダウンの際にはベッドサイドに「明日の卵」と書かれた紙が置かれ、生産者のこだわり、味の特徴、オススメの調理法などが記されている。

「楽しみに待つ」時間が食体験をランクアップさせるだけでなく、生産者の顔が見える安心・安全につながる、重要な要素の一つだ。



ロゴの入った大きなお重のような木箱に、卵料理や野菜などがたっぷりと盛り付けられ、パンやデザートは別でサーブされる充実の内容だ。中でも目を惹いたのは、鉄板焼きでも使われていた極上の黒毛和牛で、ローストビーフとして提供された。

ザ・リッツ・カールトン日光の全ての調理部門を統括する早坂総料理長は、食材に関して「江田シェフが師事した宇都宮のフランス料理店、Otowa Restaurantの音羽和紀シェフの協力もあった」と語る。開業から40年にわたり地元の生産者と信頼関係を築く音羽シェフの紹介を受けて、栃木県内の生産者50カ所近くを回った。

選ぶ際には、味のみならず、「安心・安全」につながるトレーサビリティを大切にした。鉄板焼きで提供されたホテルオリジナル飼料の黒毛和牛も、肉質の良さはもちろんのこと、生まれた時から牧場が自家栽培するコーンや牧草を食べて育ち、その後堆肥として還元されるなど、地域の中で循環するスタイルをとっていることが一つの決め手となった。

本物の良さを体感できるリゾート


こうしたスタイルの裏にあるのが、本質へのこだわりだ。食材のみならず、最も大切な「人」に関しても、そんな考えが採用されている。細谷真規総支配人によると、スタッフは栃木県出身者が半数を占めるが、実は経験よりも「この土地への愛着」を重要視して採用したという。それが、温かなサービスにもつながっているように思う。

細谷総支配人は、「目の前に男体山がそびえ、中禅寺湖が広がるこの環境は、国土の75%が山地という日本の本質的な美しさがあります。コロナ禍によりラグジュアリーの要素も変化し、例えば、この庭のように自然の中でマスクをせずに外を走り回れるという“安心”もその一部になりつつあります。また、以前に増してウェルネスへの意識が高まる中、温泉という文化は、世界に発信できるものだと思います」と話す。



ホテルでは、リクエストベースで坐禅が毎朝無料で行われており、すぐ隣の立木観音のご僧侶が訪れ、心が浄化される時間を過ごすことができる。まさに、本物の良さを体感できるリゾートだ。

コロナ禍の今年も、「今」という時間は過ぎていく。やがて親離れしていく子どものためにも、数日間でも、充実した時間を過ごせたのは大きかったように思う。外に広がるのは雪景色と壮大な大自然、だからこそ、人の温かさが際立つ。そんな場所で過ごす癒しの「冬旅」となった。

文=仲山今日子

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