ザ・リッツ・カールトン日光 人と自然に癒される「冬旅」へ

ザ・リッツ・カールトン日光


「宝物」のミニカーを掲げながらルンルンで戻ってきた子どもと合流し、向かったのは「The Japanese Restaurant」内の鉄板焼きだ。

アラン・シャペル氏の流れをくむ宇都宮のフランス料理店「Otowa Restaurant」で修行した江田剛大シェフが生み出す鉄板焼きは、「食は体を健康に保つためのもの」という考えのもと、国産の発酵バターをごく少量使うのみで、あとは食材が本来持っている水分を生かして調理するヘルシーなもの。地元の新鮮な野菜、ホテル独自の飼料で育てた瑞穂農場の黒毛和牛などが提供される。



スジ肉を赤ワイン煮にしたものを鉄板で焼いたクレープで包んだ一皿や、肉に添える醤油にもフォンドボーの作り方を応用し、香ばしく焼いたスジ肉を入れて香りをつけるなど、フランス料理の技法を生かし、かつサステナブルな視点も取り入れたコース展開だ。

皿は益子の土を使った新進気鋭の陶芸家グループ「GENDO」によるものを使い、壁には今は作れる人が少なくなったという日光彫が一面にあしらわれるなど、皿の上だけではない「栃木らしさ」も印象的だった。

サービスの田浦恒志氏による日本酒のペアリングも特筆もので、栃木の地酒の希少な種類も含め豊富な品揃え。繊細なフィレ肉には豊かな旨味の仙禽の「醸」、脂の乗ったサーロインにはキリリと辛い天鷹の有機純米大吟醸を合わせるなど、食材にしっかりと寄り添う酒が楽しめた。



そんな中でも、子連れならではのハプニングというものは起きるもので、先ほどはしゃぎ過ぎたせいか、まだ早い時間にも関わらず子どもが眠り始めた。子ども分の料理を止め、毛布をかけていただいただけでなく、田浦氏から「この時間から寝てしまうと夜中に目を覚ましてしまうかも。お部屋に何か軽いものをお届けしておきましょうか?」と嬉しい声かけもあった。

目の前のことに対応するだけでなく、この先起きそうなことまでも想像し、先回りしてアイデアを提案してくれるあたりがさすがプロの気配り。いつもなら自分たちで考えて対応をお願いするところを、すかさず提案してもらえ、あとは決めるだけというのはとても楽だ。

温泉と静けさに癒される夜


食後は、レークハウス1階のコーヒーカウンターへ。カジュアルでソファ席もあるので、子連れも入りやすい。大人は自慢のコーヒーを生かした温かなアイリッシュコーヒーを楽しんだ。外では雪が降り始め、温かな暖炉の炎を皆で囲み、自然に抱かれた静かな夜の時間が堪能できた。

冬の日光といえば忘れてはならないのは温泉だが、ここは世界のザ・リッツ・カールトンで唯一、温泉が楽しめる。スパにはプライベート温泉付きの部屋もあり、自慢の白濁した硫黄泉でじっくり温まってからトリートメントを受ければ、ほぐれ感が全く違う。



男女に分かれた共用の温泉は、花崗岩を使ったモダンでスタイリッシュな作り。特にライトダウンした夜は、水音が心地よく、ミュージアムの中にいるような落ち着いた気分になる。屋外には露天風呂もあり、入っている最中に細かな雪が降り始めると、頭だけひんやりとしたミストに包まれているような心地よさだった。
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文=仲山今日子

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