朝日新聞編集委員(朝鮮半島、米朝・日米関係担当)


政治家は特に、同じ政治家のなかで、誰が力を持っているのか、すぐに品定めに走るところもある。海外勤務をしていた頃、日本大使館の知人が浮かぬ顔をしていた。日本からやってくる国会議員に怒鳴られたという。議員交流の夕食会の座席表を送ったところ、「なんで俺が、あいつより下座なんだ」と激高された。多数の議員が参加する席順は本当に難しい。それぞれが、当選回数や政治経歴、年齢など、自分に有利な数字を突きつけて、少しでも上座に行こうとするからだ。

この知人は疲れた顔で「政治家と芸能人とヤクザってどこか似ているがありますよね」とぽつりと漏らした。この3つの人種は、いつも人から見られているという共通点がある。自ずと、自分の存在をアピールしようと力が入る。芸能人は、とにかくカメラの中の立ち位置がセンターに行くように、遮二無二がんばる。ヤクザも、着る服や食べ物にカネをかけて目立とうとする。ライバルのヤクザより、1円でも高いものをおごってみせようともする。ヤクザを長年取材している知人によれば、やはり、「相談を依頼してくる人の目の前で電話をしてみせる」ことで権力を誇示してみせるのだという。

そして今、自民党は菅政権の支持率急落もあって、政治家同士の間で「力の見せつけ合い」「力の品定め」が始まろうとしている。永田町を歩いていると、「二階さんはポスト菅のカードに野田聖子議員と石破茂議員を考えている」とか、「最近、麻生太郎財務相が茂木敏充外相とよく会っているようだ。岸田文雄元外相も有力だろう」といった根拠があるのかないのかわからないような「うわさ」をあちこちで聞く。

最近、「菅内閣の支持率の落ち方は、麻生内閣のそれと似ている」という話もよく出る。ただ、麻生内閣の頃は自民党の支持率も一緒に落ちていったが、今回は自民党の支持率はそれほど落ち込んでいない。

現在、4割ちょっとの菅内閣の支持率が、4割近い自民党支持率を下回る事態になれば、いよいよ、「菅総裁の看板では選挙を戦えない」という声が高まり、政治家の力の見せつけ合いが始まるだろう。

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文=牧野愛博

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