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朝日新聞編集委員(朝鮮半島、米朝・日米関係担当)

Photo by Kiyoshi Ota/Bloomberg/Pool/Anadolu Agency via Getty Images

自民党の二階俊博幹事長が12月14日に菅義偉首相ら8人と行った“ステーキ会食”が世間から批判の集中砲火を浴びた。自民党ベテラン議員の1人は「政治家は変なところで、自分の力を見せつけたがる。あの会合では、菅さんを呼びつけて自分の力を見せつけたかったのだろう」と語る。

実際、昨秋には、毎週月曜日の夕方に開かれる自民党役員会でこんな風景が続いたという。閣議前の閣僚懇談会でもそうだが、たいてい党総裁(首相)が最後に入場する。事前に着席して待っていた着席者は、党総裁(首相)の入場に合わせて起立して出迎える。ところが、秋の自民党役員会で最後に現れたのが二階幹事長だった。おぼつかない足取りで二階氏が現れると、先に席に着いていた菅氏が立ち上がり、「ご苦労様です」といった風情で出迎えたという。この光景に初めて出くわした他の出席者は、驚いたものの、「まあ、二階さんもお年だから、そういうこともあるよな」といった反応だった。

だが、この「二階幹事長が最後に登場」という役員会が2度続いた。参加者たちに「二階氏は確信犯だ」という雰囲気が広がった。関係者の1人は「1度遅れて総裁に迷惑をかけたら、誰でも恐縮して次から気をつける。2度続けたということは、意図的だとみられても仕方がない」と語る。

二階幹事長の行動の是非はさて置き、政治家はこのように自分の力を誇示するのが大好きだ。駆け出しの政治記者だったころ、つまらない仕事だが、よく「紙取り合戦」に巻き込まれた。役所が発表する政策資料を他社よりも早く入手して報道するという競争だ。どうせ、役所が発表するのだから、そんなことをするより、役所が隠そうとしている話を追いかける方が重要なのだが、下っ端記者にそんなことを言う力はない。命ぜられるがまま、ヤギになった気分で、あちこちに紙(ペーパーともいうが、政策資料のこと)取りに出かけた。

その際、「なるべく上流に行く」というのが取材で得た知恵だった。一番下流は記者会見。役所は、政治家から「そんなこと聞いてないぞ、俺は」と言われるのが一番いやなので、力のある政治家から順に説明する。最初は首相、次は自民党の派閥の長、次に族議員のボスといった具合だ。だから、自分の力が及ぶ限り、上流に泳いでいく。

このとき、私がたびたび世話になった政治家は、やはり、自分の力を誇示するのが好きだった。議員会館に出かけて、「紙をください」と頼むと、「よしきた。ちょっと待ってろ」と頼もしい返事が返ってくる。すると、この議員はその場で役所に電話をかけ、局長あたりを呼び出す。私が聞いているのを知ったうえで、「○○君、すぐにその紙持ってきてよ」と頼む。「どうだ、俺は役所を動かす力があるんだぞ」と記者に見せつけたかったのだろう。

文=牧野愛博

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