地球にやさしく、植物のある暮らしを 東京発「グリーン・ワイズ」イタリアでの挑戦

ハーブなどが根付くイタリアで、なぜ環境ビジネスを始めようと思ったのか


「中には日があたらないところで庭をつくってくれ、という無茶を言うお客さんもいるんですよ」と田丸氏は苦笑する。

確かに人間の意のままに植物を簡単に生やしたり増やしたりできる技術が高まれば高まるほど、植物の命のうつろいを感じる感覚が鈍くなってしまうことは想像に難くない。完璧に美しい庭や、常に青々としたインテリアグリーンに囲まれ続けていれば、日や水がない場所でも完璧な姿の植物に何か不自然さを感じる感性は磨かれないだろう。

グリーン・ワイズのスローグリーン
家具メーカーPiancaとコラボしたグリーン・ワイズの「スローグリーン」Photo credit Andrea Martiradonna /Jasmina Martiradonna

買って、飾って終わりではない グリーン・ワイズのこだわり


手入れが楽と言われる観葉植物ですら枯らしてしまいがちな忙しい日常を送る私たちが、暮らしの中で生きている植物と向き合うのは簡単なことではない。

アメリカのニューヨークで大成功している完全予約制ブティック型の植物店Tula Plant & Designは人やライフスタイルと植物のコーディネートをアドバイスしてくれるサービスで、購入者がいくら気に入っても、その人の知識やライフスタイルを見て育てられる見込みがない植物は売らないという一貫したポリシーが逆に評価されている。同じくアメリカのThe Sillはミレニアム世代を中心にD2Cの販売を展開しているが、植物のプロによるセミナーやコンサルテーションを10ドル程度から気軽に受けられることが、都会でも自然を感じながら生活したいというニーズを背景に順調に伸びている。

グリーン・ワイズ社も植物を販売して終わりではなく、その前後に環境がどのような場所なのか念入りに調べる土地や空間のリサーチを大事にしているという。また管理する人のスタイルやニーズに相応しい植物のプランニング、メンテナンスはもちろんオーナーへ手入れの仕方などの教育も総合的に行っている。

最終的にはその植物が空間や人に与えている様々な要素も指標化して、ホリスティックに植物と人間の関わりを見える化して提供するのだ。私たちの暮らしに、植物がどのような心理的・肉体的な効果を与えてくれるかがわかれば、家庭や職場、学校環境に至るまで、生産性や集中力の向上、健康促進などを目的とした、多様な植物との関わりが生まれるだろう。

買って、飾って終わりではないグリーンとの関わり方は、サーキュラーエコノミーへ転換するこれからの世界で加速していくことが予想されるビジネス領域だ。暮らしを彩る身近な植物を通して環境への意識を広げ、地球環境のルネッサンス(再生/復活)をミラノからイノベーティブに取り組んでいく田丸氏の挑戦は、きっとグリーンリカバリーに向かう世界でより飛躍していくに違いない。


連載:イタリア発「サステナブルな衣食住遊イノベーション」
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文=齋藤由佳子

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