地球にやさしく、植物のある暮らしを 東京発「グリーン・ワイズ」イタリアでの挑戦

ハーブなどが根付くイタリアで、なぜ環境ビジネスを始めようと思ったのか


私たちは何となくボタニカルなものはサステナブルだろうと思いがちだが、その元となる植物がきちんと環境に配慮され適切に育てられているかは全く別の話なのだ。食べたり体につけるものならその安全性は問われるが、観賞用となると驚くほど緩い基準しかないのは、植物が生活に活かされている伝統のあるイタリアでも同じだったようだ。

環境企業として世界に出るならば、ESG投資の市場を見ても、環境ビジネスへの理解度を見ても欧州が産業集積地であり、田丸氏はビオロジカルな植木や花の農家の開拓をするためにミラノに拠点を設けることを数年かけて実現した。

そして2019年に世界最大のインテリアの国際展示会ミラノサローネで「スローグリーン」をコンセプトにした作品を発表し、大きな反響を呼んだ。誰かの苦しみや犠牲の上に成り立つ「美」は心地よい暮らしを生み出さない。

グリーン・ワイズ
ミラノに2018年から構えている「グリーン・ワイズ」のデザインスタジオ

そんなGreen Wise Italy社の考え方は環境配慮を中心に掲げるヨーロッパのトップ家具メーカーやファッションブランド、ヘアケアメーカーなど多様な業界で共感を呼んだ。自社の製品のサステナビリティだけでなく、その製品を含むライフスタイルの全てに美意識を行き渡らせたいという顧客を中心に支持が広がっている。

イタリアの花き産業は、他のヨーロッパ諸国に比べて縮小している。ローマ時代に薔薇の接木の技術を発明し、ポンペイで一大産業の土台を築いたが、その後は北の温暖なリグーリア州を中心に栄えたものの近代の経済危機によって野菜農家に鞍替えするなど衰退が続いている。そのような業界でEU全体で推奨される気候変動や生物多様性に取り組むべきことはわかっていても、今すぐ環境配慮した生産に主体的に取り組むのだという意識の変革は難しいのかもしれない。

しかしこのコロナで新たな可能性も生まれた。The Horticultural Trades Association(HTA)の英国内調査によると、今年はおよそ300万人のイギリス人が新たにインドアで植物を育てたりガーデニングに取り組むようになったという。そのうち半数は45歳以下でこうした個人の植物愛好家たちは約67%が環境配慮をした種や肥料の選択をしているという。

この動きは世界的なトレンドとも合致している。このような植物愛好家が増えることで、花き業界全体でも環境配慮への転換は余儀なくされるだろう。

枯れないグリーンを不自然に感じる感性を磨く


インテリアグリーンのビジネス市場は2020年に世界的に最も成長した領域のひとつだ。エコやサステナブルへの意識の高まりに加え、コロナ禍で家にいる時間が増えた人たちへの心の癒しとして植物が与えてくれた力は大きい。

田丸氏が昨年12月からイタリアのトリノでオープンした、注目のエコサステナブルデパート「Green Pea」で家具メーカーPiancaとのコラボレーションを始めたと言うので、さっそく展示を見に行った。

無機質で生活感がなくなりがちなインテリアショールームで、本物の森の木がそうであるように、季節に合わせて少し色の変わった葉がはらりと落ちるさまや、茎の自由で個性的な形を活かした活けた花には少し虫に食われた葉がそっと寄り添い、空間に自然の温かみのあるリアルさや静かな落ち着きを加えていた。
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文=齋藤由佳子

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