キャリア・教育

2021.01.18 08:30

いまだ根深い米国の教育問題 人種間格差が残る理由


スタンフォード大学は、このデータは、テストの平均点の低さの責任を学校に求めるという一般的な議論を裏付けるものではないとしています。これは、白人の学生は学校のレベルがより高いと推定される、より裕福な地域に住む傾向があるためです。

スタンフォード大学は、テストの平均点が実際に示しているのは教育機会の格差であり、それは子どもたちの幼少時の体験にまでさかのぼることができるとしています。これらの体験は、家庭、保育園や幼稚園、そして、地域社会で形成され、社会情緒的能力および学力を育みます。

スタンフォード大学は、高所得の家庭は子どもたちにこうした機会を与えられる可能性が高くなるため、家庭の社会経済的資源は教育成果と強く関連しているとしています。また、米国では一般的に、黒人およびヒスパニック系の子どもたちの両親は、白人の子どもたちの両親に比べて収入や学歴が低いことにも注目しています。

居住地、学校の隔離のパターン、州の教育的および社会的政策など、その他の要素も、教育格差の規模に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、別のスタンフォード大学の研究は、懲罰も教育格差へ影響をもたらす可能性があるとしています。この研究は、黒人と白人の学生の間の教育格差を、同様の悪事に対し白人よりも黒人のほうが厳しく罰せられるという事実と関連付けています。例えば、黒人のほうが白人より停学処分を受けることが多いなどです。

コロナ禍による影響も


スタンフォード大学は、データを活用して人種と貧困をマッピングすることにより、すべての子どもたちの教育機会を改善していくために必要な洞察が得られるとしています。

そして、このような洞察の必要性はこれまで以上に増しています。マッキンゼーの調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大により強いられた休校措置も、既存の教育格差を悪化させた可能性があることが分かりました。

同社のコンサルタントによれば、その結果として生じる学習機会の損失は、低所得の黒人およびヒスパニック系の学生のほうがより大きいと予測され、影響を受けた子どもたちの経済的な幸福に長期的な影響を与える可能性があるということです。

黒人およびヒスパニック系の家庭の自宅には、高速インターネットの環境が整っていないことも多く、それが遠隔学習を難しくしています。

また、経済政策研究所によれば、低所得地域に住む学生は、きちんとした家庭教育を受けた経験が少ないということです。同研究所はパンデミック(世界的大流行)の初期段階で、新型コロナウイルスの感染拡大が教育格差を「激化」させると予測し、格差が学校教育の半年間に相当程度、拡大する可能性があることを示唆しました。

世界経済フォーラムは、今年10月に開催された「ジョブ・リセット・サミット」で、拡大する所得格差に関する課題とその対策について議論を行いました。

このサミットは、私たちが現在の危機から脱するにあたり、より包括的、公正かつ持続可能な組織、経済、社会を形成する方法を模索することを目的に開催されました。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=David Elliott, Senior Writer, Formative Content

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