さりげなく着られて、着ればサマになる。理由のある日常着

オーカ・トランク

Forbes JAPAN本誌で連載中の『紳士淑女の嗜み』。ファッションディレクターの森岡弘とベテラン編集者の小暮昌弘が「紳士淑女が持つべきアイテム」を語る。今回は1月号(11月25日発売)より、「オーカ・トランク」のジャケット、ブルゾン、パーカの3点をピックアップ。


森岡 弘(以下、森岡):コロナ禍もあって、在宅で仕事をするビジネスマンが増えています。以前にも増して日常着的な服が注目されていますが、今回は「オーカ トランク」というベーシックを中心にしたブランドです。

小暮昌弘(以下、小暮):業界ではちょっと話題のブランドですね。どんな特徴がありますか?

森岡:「オーカ・トランク」は、赤坂で70年以上続く老舗テーラー「テイラーアンドクロース」の3代目社長である隅谷彰宏さんが立ち上げたメンズ、レディスのブランドです。「良質なものを選ぶことに妥協しない人」がターゲットだと聞いています。

小暮:今日お持ちいただいたのはジャケット、ブルゾン、パーカの3点ですが、どれも無地で、デザインはベーシックですね。

森岡:「オーカ・トランク」の最大の特徴は、私は良質な素材にあると考えています。普通のブランドならばこの素材を使うと価格が高くなり、売るのが難しいとドロップしてしまうような高品質な素材を選び、着る人にその価値観を実感してもらえる“最良”な日常着をつくっているブランドです。

小暮:3点に使われている「スビン綿」を使ったストレッチ素材。ソフトで滑らか。しかも薄手で柔らかいので着やすそうですね。

森岡:隅谷さんは大学院でシステムデザインを学び、ブランディングを研究されたそうで、発想が斬新。本当に良質なものを、それをわかる人に適正価格(フェアプライス)で届けたいと考え、生地屋さん、仕立て屋さん、そして隅谷さんがそれぞれ協力し合って、製品はつくられています。

だから基本セールはしない。シーズンをまたいでも着こなしに困らないアイテムばかり。サイズ感などで時代の気分を表現していますが、基本はベーシック。色目も絞って展開していますのでどのアイテムも合わせられる。すべてに対して「嘘のない、志とプライドのある服」というコンセプトです。

小暮:5年前にアメリカのブルックリンで取材したあるブランドなのですが、創業者は自転車乗りのビジネスマン。会社に行くのに長くはいていると、どうしてもパンツが破れて困っていた。

それで彼は丈夫で動きやすい素材を探してパンツを試作したのですが、それを卸して販売するとなると600ドルを超えてしまう。そこで彼は自分でサイトをつくってフェアな価格で販売したらすごい売れ行きだったらしいです。つくるだけでなく、販売方法も変えていかなければいけない時代です。
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photograph by Masahiro Okamura | text by Masahiro Kogure | fashion direction by Hiroshi Morioka | edit by Akio Takashiro

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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