「自信のなさ」はどこからくるのか 迷いを減らす仕事との向き合い方

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本来、仕事を考えるうえでは「自分がなにをしたいか」という視点がもっとも大切です。仕事を選ぶということは、「どう生きていくか」ということとも深く結びついていると思うのです。

どんなにたくさん情報を集めたって、“したいこと”も“生き方”も見つけることはできません。やはり、自分の心の中に見つけるしかない。そのためには、じっくり腹を据えて考えることが必要です。

言葉を換えていえば、「心の置きどころ」をしっかり定めて、その心に問いかけてみるということでしょう。

その意味では、情報は“迷い”のもとにもなります。情報がありすぎるからかえって、心をどこに置いたらよいかわからなくなるのです。心がふわふわと彷徨(さまよ)っていたのでは、迷ったり、不安になったりして当然です。

かつての日本では、ほとんどが家業を継ぐというかたちで仕事に就いていました。農業がその典型ですが、職人さんの世界でも親から子、子から孫にその技が受け継がれていたのだと思います。

選択肢がなかったことで、「心の置きどころ」は定まっていたし、その仕事に専心することができた。そして、まっしぐらにその仕事に打ち込むことが、人生を充実して生きることにもつながっていたのです。

選択肢がないのだから、仕事に迷いや不安が入り込む余地もなかった、といってしまえば、たしかにそう。しかし、その時代の人たちは、仕事ばかりでなく、「生きる」ということについても、現代人のようにいたずらに迷い、不安にさいなまれる、ということはなかったはずです。

もちろん、選択肢が多いことは可能性を広げる、という面からも大切です。ただし、選択肢は絞り込むことが重要。「心の置きどころ」を定めるということに力点を置いて、そのために必要と思われる情報だけを集め、選択肢を広げる、というふうに考えたらどうでしょう。

置きどころが定まった心に問いかけて選んだ仕事、あるいはやると決めた行動なら、たとえすぐには思うような結果が出なくても、ブレるということがなくなります。そのことに一生懸命になれる。ここが大事なところです。

「随処(ずいしょ)に主(しゅ)となれば、立処(りっしょ)みな真(しん)なり」という臨済宗の開祖である臨済義玄(ぎげん)禅師の言葉があります。その意味は、どんなところにあっても、「いま」「ここ」でできることを一生懸命やっていれば、自分が主人公になって生きられる、ということです。

“主人公”の視線は飛び交う情報に惑わされて、あちらこちらキョロキョロと宙を泳ぐようなことはありません。しっかりと一定方向を見据えています。

“主人公”が踏みしめる大地にはくっきりとした乱れのない足跡が刻まれます。たしかな足どりで人生を歩んでいけるといってもいいですね。

いつだって、どこでだって、誰もが主人公になれるのです。まず、「心の置きどころ」を定める。「いま」できることに集中する。そこから始めませんか?

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