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イノベーションのヒントがここに。

新型コロナウイルスの新規感染者数の急増を受けて、政府は1月7日に東京都と埼玉、千葉、神奈川各県の1都3県を対象に、1カ月間の緊急事態宣言の発令を決めました。宣言は、昨年5月以来となります。経済活動への打撃は避けられず、日本経済にとって厳しい年明けとなりました。

緊急事態宣言発令で一定の感染拡大抑制効果


緊急事態宣言が再発令される直接的なきっかけとなったのは、昨年大晦日(12月31日)に、東京都での新規感染者数が1日で1337人と過去最高に達したことです。1月2日に、東京都の小池知事と埼玉、千葉、神奈川各県の知事が、西村経済再生担当相と会談し、新型コロナウイルス特別措置法(以下、特措法)に基づく緊急事態宣言の発令を政府に要請しました。これを受けて、1月4日の年頭記者会見で菅首相は、発令の検討に入ったと説明したのです。

政府内では、緊急事態宣言の発令が経済に与える悪影響を警戒する意見と共に、その感染拡大抑制の効果に懐疑的な見方もあった模様です。確かに、強制力が弱い現在の特措法のもとでは、宣言の発令が感染抑制に絶大な効果を発揮する保証はないように思います。また、昨年4月、5月の宣言時と比べて、その影響力は小さい可能性は十分に考えられるところです。時短・休業要請の対象業種が狭められることに加え、当時ほどには、感染拡大に対する人々の危機意識が高まらないためです。

しかし、発令による政府の危機感が伝わることで、それが個人の行動を変え、感染拡大の抑制に一定程度貢献するという、アナウンスメント効果は期待できるはずです。

緊急事態宣言発令で個人消費は4.89兆円減少


緊急事態宣言が再び発令されれば、不要不急の消費は相当分抑制されることになるでしょう。家計調査統計に基づいて、個人消費支出のうち外出を伴うような不要不急の消費項目をとり出すと、それは消費全体の55.8%となります。緊急事態宣言の再発令でこの不要不急分の消費が失われると、ここでは仮定します。

一方で、全国の国民所得に占める東京の比率を見ると17.8%(内閣府「県民所得統計」、2017年)、神奈川県が7.1%、埼玉県が5.4%、千葉県が4.8%です。合計で35.0%と全国の3分の1強の規模となります。この1都3県を対象に1カ月間の緊急事態宣言が発令される場合、4.89兆円の消費が失われる計算となります。これは日本の1年間のGDPの0.88%の規模に相当します。宣言が2カ月続けば、それぞれ2倍の規模となります。

ちなみに、昨年春の緊急事態宣言発令によって、4月には10.7兆円、5月には11.2兆円の個人消費がそれぞれ失われたと計算されます。今回の緊急事態宣言の対象区域が1都3県、1カ月間にとどまれば、経済への悪影響は昨年春の2割強程度となります。

しかし、今後の感染状況次第では、緊急事態宣言の対象区域は1都3県から段階的に拡大されていく可能性も考えられるところです。仮に全国が対象となる場合には、1カ月間で14.0兆円の消費が失われ、それは1年間のGDPの2.53%の規模となります。

緊急事態宣言の再発令を受けて、今年1-3月期の実質GDPが前期比で小幅にマイナスとなる可能性は相応に高まるように思います。その場合、昨年4-6月期に続くマイナス成長で、日本経済は「2番底」に陥ることになります。

企業の破綻、廃業の増加への対応が重要に


仮に、緊急事態宣言の対象区域が1都3県、期間が1カ月となり、直接的な消費抑制効果が昨年春の2割強程度にとどまる場合でも、飲食業や旅行関連業種を中心に、企業経営への打撃はかなり大きくなることを覚悟する必要があるように思います。

早期の感染収束に期待して今まで何とか耐えてきた企業が、今回の緊急事態宣言の再発令をきっかけに、ついに耐え切れなくなって、自ら廃業を選ぶようなケースも増えるのではないでしょうか。それは、失業者の増加にも繋がります。

こうした点を踏まえると、政府のコロナ経済対策は、再び企業、個人を支援するセーフティーネット(安全網)の強化へと、その軸足を戻す必要がありそうです。先般、政府が閣議決定した3次補正予算には、ポストコロナを見据えて、企業の業態転換を支援し、円滑な産業構造の変化を促す政策が多く盛り込まれました。これは、感染リスクが抑制された後には確かに重要な政策ですが、現状はポストコロナから、コロナ真っただ中の状況に再び押し戻された感があります。このような局面では、企業や労働者をしっかりと支える給付金や助成金の増額、延長などの政策の方が、優先度は高いでしょう。

政府は通常国会での可決を目指す3次補正予算の中身を今からでも組み替えて、企業、個人の支援を強化する方向へと経済政策を大きく見直すことを検討すべきではないでしょうか。

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木内 登英|NRI エグゼクティブ・エコノミスト

(この記事はNRIジャーナルからの転載です)

文=木内 登英

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