コロナ禍が与えた、「予想を当てにするな」という教訓

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去年の今ごろ、2020年に起きることを予想できた人がいただろうか? 答えはもちろん、ノーだ。当時、市場はもっぱらアメリカの好景気や失業率の記録的な低さ、米中の第1段階の貿易合意、イランのガセム・ソレイマーニー司令官の暗殺が世界経済に与える影響を気にかけていた。

2020年1月には、わたしたちは武漢で「新型」のコロナウイルスが発生しているらしいことも知っていたけれど、その経済的な影響はせいぜい中国や世界経済での中国の役割に限られると思っていた──そうでないことがわかるまでは。

アメリカの保健当局の高官であるアンソニー・ファウチのような人ですら、このウイルスについてはそんなに心配しなくていい、アメリカでのリスクは「軽微」だと語っていた。こうした事実からは、教訓を汲みとるべきだろう。予測は無視せよ、という教訓だ。

本コラムでは予測や予言をしないようにしているけれど、2020年2月にはある箇所でこう書いていた。「このアウトブレイクが深刻なものだとすれば、致命的なリセッションになるかもしれない」。まあ、外してはいないけれど、とくに冴えた認識というわけでもない。

スウェーデンを例外として、世界各国でロックダウンが相次ぎ、主要国の経済を軒並み揺さぶることになるとは、想像もしていなかった。それどころか、同じパラグラフでは、政府の厳しい規制が敷かれるのは中国だけであるかのように、中国の渡航制限が及ぼす影響について記していた。

筆者は、アメリカ政府で長年働いてきたファウチのような、いわゆる専門家たちの話を傾聴していた。だが、彼らの助言を基に考えを組み立てるのは誤りだった。

そのことをぜひ覚えておいてほしい。とくにこの時期、2021年の原油価格は1バレル=65ドルの高値をつけるだろうだとか、年末には70ドルに達しているだろうとか言われるのを耳にしたときには。それは、ただの臆測にすぎないのだ。

誰かがS&P500は4000ポイントまで上がると言うのを聞いたときにも、それはあくまで臆測だということを思い出してほしい。年が変われば新しいカレンダーをかけ、確実なことなどない未来を迎える。これが真実だ。

ハッピーニューイヤー。今年もどうぞよろしく。

編集=江戸伸禎

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