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青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)

「もうオフィスは要らないかもしれない。少なくとも会議室で会議をするスタイルはなくしたい。会議室は解体して、個室を増やそうかな」

新型コロナウイルスに伴う最初の緊急事態宣言の全面解除から約1カ月。サイボウズは出社かリモートかの判断を社員に任せているが、この時点で出社している社員は1割以下。代表取締役社長の青野慶久は、がらんとしたオフィスを見回してこう答えた。

100人いれば100通りの働き方がある──。サイボウズはその理念に基づき、コロナの以前から働き方を本人に任せていた。リモート勤務していた社員は約3割。出社しない社員のため、オンライン会議も導入済みだ。今回慌ててリモート環境を整えた企業と比べると何歩も先を進んでいるが、ほぼ全員がリモートに移行して新たに見えてきた景色もある。

「以前は対面の参加者とオンラインの参加者が混じっていたため、出席者に情報格差が生まれていました。全員がオンラインになって初めてそのことに気づきました。これからオフィスにいる人も、会議はオンライン参加が原則。そうすると隣に声が聞こえない空間が欲しくなるから、個室をつくろうかなと」

以前から会議の在り方はユニークだった。青野が開く会議は、1on1を除いて基本すべてオープン。社員は自由に視聴できて、実況スレッドにコメントも書き込める。

オープン&フラットな社風を持つサイボウズ。ただ、創業からしばらくは、今とは大きく違うカルチャーを持つ会社だった。

青野が仲間と起業したのは1997年。グループウェア事業で急成長して、3年後に東証マザーズに上場を果たす。当時はノリと勢いがすべてのITベンチャー。疲弊して辞めていく社員が後を絶たなかったが、「べつに悪いことだと思っていなかった」。

歯車が狂ったのは2005年に社長になってからだ。成長を目指して企業を立て続けに9社買収。売り上げこそ4倍に伸びたが、買収先の舵取りに苦しみ、利益を減らしてしまう。

「日経新聞に『成長が鈍化』と書かれて焦ったんでしょう。あのころは自分の軸ではなく、他人の軸を気にして生きていた」

下方修正を2回出し、離職率も過去最高の28%を記録。失意の底にいた青野を救ったのは、松下幸之助の「真剣に志を立てよ」という言葉だった。真剣とは、命を懸けること。自分が命を懸けられるものは何かと問い直したところ、原点であるグループウェアにいきついた。

「前の会社では、球場に電光掲示板を売る技術営業をしていました。当時は完全に個人戦。『情報共有すればチームワークが活性化するのに』という思いがあり、グループウェアで独立しました。自分がやりたいことは、そのころと同じ。チームワークのいい組織を世の中に増やしていくことだけをやろうと誓いました」

文=村上 敬 写真=間仲 宇

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