ビジネス

2021.01.07 07:30

リアルで会う、をやめたマッチングアプリは出会いの価値を再定義する


気軽でフラットな出会いの創出が人生を変える


──「なんとなく怖い」という漠然とした抵抗感についてはどうお考えでしょうか。

これについては、わりと楽観視しています。Facebookも日本に入ってきたときは抵抗感がありました。「ネットで実名を公開するなんてありえない」といわれていましたが、10年が経過したいま、そんな状況にはない。マッチングアプリ業界もどんどん成熟してきていますので、あと5年も経てば「ネットで出会うのが怖い」という風潮もなくなるのではないでしょうか。会うということがどんなネガティブな要素よりも上回るポジティブなものがあると思うので、その心的ハードルを捨てると、もっと面白いことが起きるのではないでしょうか。

中でも、ハードルを高くしてしまっているのが「婚活」という言葉です。もちろん、結婚をゴールとするのはいいことですが、「婚活」という言葉には就職活動のような切迫感がありますし、結婚に至らない人との出会いの全てを失敗ととらえてしまいます。

そうなると、99%の出会いが失敗になってしまうわけですよ。そうじゃなくて、「化学反応が起きたらいいな」というくらいのフラットな気持ちで出会いを増やしていけば、友だちや仕事仲間ができることもあるでしょうし、そこから人を紹介されて結婚相手が見つかることもあるかもしれません。もう少し「出会い」を気軽に考えても良いかもしれませんね。

DineのHPの写真

ゆずれないこだわりを、捨てた時


──「合理性」というのは、出会うまでのメッセージのやりとりを最小限にしたところに表れていますが、ここまで思い切った仕様にしたのはなぜでしょうか。

これは、DeNA時代のカナダ赴任の経験が影響しています。1人で赴任したので、当初は友だちが誰もいなかったんです。平日はいいのですが土日は寂しくて、いろいろなマッチングアプリを試しました。会ってしまえば友だちになれるのですが、当時の英語力も低かったので、メッセージのやりとりだと全くコミュニケーションがとれないんです(笑)。

もう1つヒントになったのが、あるネット掲示板でした。「スキーに行きませんか」「レストランがオープンしたので行きませんか」という募集をしている掲示板だったのですが、そこだとすぐに出会えるんです。「目的意識」が一致すれば出会えると気づいたとき、「飲食店での出会い」を前提にするというアイデアが浮かびました。食事は会話の潤滑油にもなりますしね。

──2020年はコロナ禍の1年でした。対面を避けることの常態化は、マッチングアプリにとってかなりの逆風だったと思いますが、どのように対処されたのでしょうか。

Dineは「メッセージのやりとりをせずに最短距離でリアルに会う」ことを最大限に訴求してきたサービスです。しかも、ぼくは相当こだわりが強い人間で、「リアルで会う」ことは最大のこだわりポイントでした。コロナ前から社員に「リモートワークしましょう」といわれても「絶対しない」と蹴散らしてきたほどです(笑)。

しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大し、「不要不急の外出自粛」の呼びかけがなされた直後から予約のキャンセルが殺到しました。そこで「リアル」へのこだわりをやめて、オンラインデートの企画を急いで考えたんです。まずは、出会いのプラットフォームとしての機能を維持するため、Zoomを活用した仕組みを即日搭載しました。ローンチまでにかかったのはたったの8時間です。そして、Dineとしてのオンラインデートの仕組みにするため並行してオリジナルの機能を10日間で開発しました。
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文=高橋秀和 編集=坂元耕二

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