世界とズレていく日本のコロナ対策 PCR抑制が引き金か?

Classen Rafael/EyeEm/Getty Images

新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。1月7日、菅義偉首相は、首都圏の1都3県の緊急事態宣言の再発令を決定した。感染者が急増し、医療崩壊が迫る現状で、やむを得ない対応だろう。

ただ、これで日本の経済はますます低迷する。表1は、東アジア・東南アジアにおける第1波(2020年4~6月期)、第2波(7~9月期)の人口あたりの死亡数と経済ダメージ(GDP対前年同期比)を示したものだ。第2波では、日本は人口当たりの死亡数でワースト3位、GDP前年同期比はワースト4位だ。

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表1 出典:OECD、United Nations、JETRO Our World in Data(10/28)、台湾:National Statistics Republic of China(Taiwan)(12/8)、日経(10/30)/医療ガバナンス研究所 山下えりか作成

政府は新型コロナウイルスへの対策を「日本型モデル」の成功と自画自賛したが、こうした数字を見る限り日本はアジアの「劣等生」といっていい。

アジアはともかくとして、欧米に比べると上手く対応したという声もあるが、そうとも言い切れない。

表2は、同じく欧州の主要国と日本の人口あたりの死亡数と経済ダメージを比較したものだ。死亡数こそ少ないものの、第2波で日本より経済ダメージがひどかったのは、イギリスとスペインだけだ。日本は感染者数が少ないのに、経済ダメージが大きい。国民の多くが不安を抱いているからだろう。

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表2 出典:OECD、United Nations、Our World in Data(10/28) /医療ガバナンス研究所 山下えりか作成

重症者を集中的に診る病院がない日本


このことは、最近、話題になっている医療崩壊に対する懸念にも通ずる。表3は、主要先進国と東アジアの人口当たりの感染者数、医師数、病床数を比較したものだ。

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表3 出典:WHO(医師数)、Our World in Data、OECD(急性期病床数) /医療ガバナンス研究所 山下えりか作成

日本の感染者数は、もっとも感染者が多いアメリカの35分の1だ。医師数こそ米国の96%だが、急性期病床数は3.17倍もある。数字から見ると、なぜ、この程度の感染者数で、「重症ベッドは切迫」などと医療崩壊が叫ばれてしまうのだろう。

日本では重症者を集中的に診る病院がない。1月4日現在、都内の病院に入院している重症患者は108人だ。東京都は重症者用ベッドとして220床を既に確保しており、250床まで増やすように医療機関に要請中だ。

では、どのような病院が重症患者を受け入れているのだろうか。実は、このことについて、厚労省と東京都は情報を開示していない。知人の東京都議に調査を依頼したが、東京都からは「教えることはできない」と回答があったという。

厚労省が特定感染症指定医療機関や第一種感染症指定医療機関に認定している病院は受け入れているだろうが、残りはわからない。

知人の都立病院勤務医に聞くと、「1つの病院で受け入れている重症患者は5人程度」だという。多くの病院が少数だけ重症患者を受け入れているようだ。
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文=上 昌広

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