経済・社会

2021.01.07 16:30

第二波真っ只中のスウェーデンから 現地日本人医師による実態証言

2021年1月1日、スウェーデン、ストックホルムの街中。(Getty Images)

2021年1月1日、スウェーデン、ストックホルムの街中。(Getty Images)

政府は7日、首都圏の1都3県を対象に緊急事態宣言を出すことを決定する。年を越え、新型コロナに絡む情勢は、収まるどころか緊迫感を増してきた。

昨年、新型コロナ対策に関してあくまでも独自路線を貫き、世界から注目されてきた国がスウェーデンだ。Forbes JAPANでも昨年5月、6月、多くの反響を集めた「スウェーデンのコロナ対策」関連の記事に、スウェーデン在住の医師、宮川絢子博士に聞いた「スウェーデン新型コロナ「ソフト対策」の実態。現地の日本人医師はこう例証する」と「スウェーデンの新型コロナ対策は失敗だったのか。現地の医療現場から」があった。

宮川博士は、スウェーデン・カロリンスカ大学病院・泌尿器外科勤務の医師で日本泌尿器科学会専門医であり、スウェーデン泌尿器科専門医(スウェーデン移住は2007年)だ。

カロリンスカ大学病院はスウェーデンで最多の感染者、犠牲者を出したストックホルムにあり、国内で最多の感染者治療を行なった医療機関である。ピーク時には感染者の治療も担当した医師としての経験と多くのデータに裏付けられた検証にもとづき、宮川博士に「スウェーデンの『第二波』」についてご寄稿いただいた。


新型コロナウイルス第一波で多くの死亡者を出したスウェーデンだが、夏の間は他の国が第二波に見舞われる中、感染が再拡大することもなく、穏やかでほぼ通年通りの夏を国民は過ごすことができた。

10月下旬から少しずつ新規陽性者が増加し始め、11月には指数関数的に感染が爆発、「第二波」という言葉を使いたがらなかった国家疫学者のテグネル氏も、とうとう第二波到来を認めざるを得ない状況に陥った。

夏の間の収束状態を鑑み、公衆衛生庁はストックホルムでの抗体獲得率が約20%となったこと、未感染者を含め、少なからず国民が新型コロナウイルスに反応するT細胞免疫を持っているというデータ、感染収束を根拠として、「集団免疫を獲得した可能性も」あるとの見解を示していたが、第二波の到来で、それも撤回となった。

最近の感染状況は──


指数関数的な新規陽性者の増加は落ち着いたものの、1日あたり7000人前後、週あたり4万人程度の新規感染者が発生している(図1)。

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図1:「新規要請者数」Dagens Nyheter(スウェーデンの新聞社)より。

週毎の検査数は30万件近くにまでなっており(図2)、症状のある人や濃厚接触者が医師の診察なく必要な時に無料で検査を受けられるシステムが構築されている。


図2:「週毎の検査数」公衆衛生庁より。

入院患者総数は春の第一波を超え、全国で現在、3000人程度が入院している。そのうち、ICUは約350人である(図3)。

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図3:「入院患者総数」Dagens Nyheterより。

ICU入院者数は第一波よりも少なく、また、ICUでの治療期間も第一波に比べて半分に短縮されるとともに治療成績も向上している。
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文=宮川絢子 編集=石井節子

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