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スウェーデンは路線変更したのか


スウェーデンがこの1カ月、次々と規制を強めたことに伴い、海外のメデイアは、「スウェーデンが路線変更した」と報道するようになった。

現在の主な規制は、1)4人を超える集会の禁止、2)高齢者施設訪問禁止、3)できる限りのリモートワーク、4)有症状時の自宅待機とPCR検査、5)飲食店での20時以降のアルコール販売禁止、6)中学、高校、大学の遠隔授業、7)公共のジム、プール、美術館の閉鎖、8)ショッピングセンターなど、店あたりの最大入場人数を定め、それを遵守できなければ閉鎖措置などとなっており、主にソーシャル・ディスタンスを確保し、リスクグループを隔離することを徹底したい方針だ。新たに中学校が遠隔授業となったが、これは、中学生が小学生以下に比べ比較的感染者が多いというエビデンスによる決定である(図10)。

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図10:「子供年齢別新陽性者数」公衆衛生庁より。

また、2021年1月7日より、通勤時間帯の公共交通機関内でのマスク着用を推奨することになった(あくまでも強制ではない)。

スウェーデンでは現在でもマスク着用率は数%であり、これまでマスク着用が推奨されたことはなく、その点で世界中から注目されるとともに批判を浴びてきた。よって、限定的であってもマスク推奨が加わることで、「スウェーデンが路線を変更した」と揶揄するメデイアも多いが、公衆衛生庁の見解ではそうではない。マスクに関しては、以前から、「必要があれば限定的にマスクを推奨する可能性がある」ことを明言しており、今回、それが実行に移された形だ。ワクチン接種はクリスマス後の12月27日から、介護施設入居者、スタッフに対して始まった。今後、コロナ治療最前線のスタッフへも接種が始まる。

第二波では、公衆衛生庁だけではなく、首相や大臣など政治家が頻繁に記者会見を行なっている。そのことで、政治家と公衆衛生庁の間がうまくいっていないという報道も見られる。少なくとも記者会見では、政治家や公衆衛生庁など専門家グループは、「双方、話し合いを重ねながら方針を決定している」と、蜜月が破綻したことは否定している。今後の感染拡大に備え、いっそう厳しい規制強化が必要な場合には、現行の法律では不可能であることも多く、法改正を要する点で政治家が介入する必要があるため、政治家の露出が増えるのは当然であるとも言える。

コロナ禍において、多くの民主主義国家が、ロックダウンを含めた強権を発動している。その中で、スウェーデンや日本は、国民の自由意志に任せるという方針を取っている限られた民主主義国家である。スウェーデンでは、「国民の人権」を守ることは非常に重要視されている。国が強権を発動し、国民の行動に制限を加えるなどの「人権侵害に当たるとも考えられる政策を選択すること」に対するハードルが非常に高いと言える。

文=宮川絢子 編集=石井節子

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