サロン・デュ・ショコラ開催、カカオの可能性に挑むショコラティエたち

「パレ ド オール」の逸品


「ビーントゥーバー」といえば、豆から「タブレット」と呼ばれる板チョコレートを作ることを指すが、この動きが次の段階を迎えている。

今年初登場の「パティスリー ジュン・ウジタ」の宇治田潤シェフは、クラッシックをベースにしたフランス菓子作りで知られ、専門誌で技術を伝える連載を持つなど、業界でも高い評価を得ているトップパティシエだ。4年ほど前からカカオ豆からのオリジナルのチョコレート作りに着手し、ボンボンショコラのみならず、ケーキやエクレアにもこのオリジナルのチョコレートを使用している。


宇治田潤シェフ。店内の一角がチョコレート専門のショーケースだ

きっかけは、「カカオはフルーツ。他のフルーツのことはよく知っていても、カカオのことをよく知らなかった」と気づいたこと。2019年にパリのサロン・デュ・ショコラに招かれたこともあり世界中から送られてくるカカオ豆を、その都度ローストしてシングルオリジンのチョコレートを作り、オリジナルを生み出している。

これまでに50種類以上の豆を試し、現在は南米を中心に約5種類の豆をブレンドする。「既製品のチョコレートも品質が安定していておいしいが、豆から作るとなると、より細かい調整が必要。季節の果物と同じように、自然と向き合い、その時その時の微妙な味の違いが楽しめる」とその魅力を語る。

オリジナルで作るからこそ、豆によって違う油脂の溶解温度も調節ができる。ケーキなどに使う場合は、クリームなどの乳製品と混ぜるため、深い余韻が生まれるように強めにローストし、良く練るようにしている。こうして生まれたエクレール・ショコラは、濃厚なガナッシュのようなクリームがたっぷり詰まった、大人の味わいに仕上がっている。



今回出品されるボンボンショコラには、カカオ豆の果肉を使ったフィリングを使ったものも登場する。「カカオのいろいろな部分を使う」ことも、これからのテーマの一つで、最近はカカオバターを使ってバタークリームのようなものが作れないか、と試作中だ。

宇治田シェフは「パティシエでないと引き出せないカカオの魅力があるはず。チョコレートをフルーツとして捉えることで、より深く素材や製法に向き合い『なぜ、どうして』と考えながら作っていくことができる。これからの菓子作りにも影響を与えそうだ」と語る。
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文=仲山今日子

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