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クリエイティブディレクター/コピーライター


車の往来の多い、活気あふれる松本市大橋通り沿い。松本城からもすぐの距離にあるこの街道沿いで、車は停まった。降りたのは、威風堂々とした土蔵造りの建物の前。昼食の場となる、「ヒカリヤ」であった。



「ヒカリヤ」は120年前に建てられた明治時代の屋敷をリノベーションしたレストランで、西洋文化としてのナチュレフレンチを供する「ヒカリヤ ニシ」と、日本料理を供する「ヒカリヤ ヒガシ」の2つからなる。夜にフランス料理をいただく予定なので、ここでは日本庭園を眺めながら、目にも彩な三段重弁当「丸箱膳」をいただくことに。滋味溢れる地の食材を、まさに五感を喜ばせながらゆっくりと堪能した。



「明神館」の洗練に触れる


至福の昼食を済ませ、宿に着いたのは15時を少し回った頃。松本市街を離れ、随分と九十九折の山道を登ってきたものだ。聞けば、標高は1050mもあるという。

もう大方葉を落としてしまった冬の森にはただ清冽な沢の水音だけが響き渡り、耳をそばだてるとシジュウカラの愛らしいさえずりが聞き分けられる。山々に抱かれた神聖な場所にたどり着いたことを肌で感じると同時に、ふと今朝ほどまで身を置いていた東京の喧騒を思い出し、愕然とする。



思えばSKY TREKに乗り込んだのはお昼少し前。車だったらまだ長野自動車道を走らせている最中だろうに、もう松本にいて、夢のようなアペリティフと昼食を済ませ、疲れのないままにチェックインしようとしている。「旅といえば早起きが付き物」という常識など我関せずと、ゆっくり起き、あっという間に飛び、リゾート時間を堪能しているのだから、時間を大切にするエグゼクティブがこうした旅のスタイルに飛びついているというのも当然至極と合点が行く。

今回はリフレッシュとインスピレーションを得るための1泊旅行だが、以前同じSKY TREKを使って松本市に同行したエグゼクティブは、1日をフルで視察に充てて、その日に帰京してしまった。せっかく来たのにもったいないと思ったが、陸路では考えられない、そんな性急な旅すら叶えられる、便利な時代になったものではないか。



さて、感性を刺激するモダンさと、手仕事の温かみと安らぎを感じさせる和のエッセンスを生かした客室で、まずは一息つく。「然・熊野312」の部屋は、72平米のゆったりとした空間の外に、専用露天風呂のある20平米のテラスが付いていて、窓外に立ち上る湯気が如何ともしがたい魅惑で誘ってくる。

次の予定まで1時間もなかったが、部屋付きの露天風呂は館内の移動がないからとにかくラクだ。まだ明るい森を眺め、渓流のせせらぎに耳を傾けながら、ひと風呂浴びる。「ああ、来て良かった」と、着いて早々独りごつ。

編集、文、写真=大野重和(lefthands)

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