メガブームの陰に海賊版との闘いあり。悪夢の連鎖は断ち斬れるのか?

出典:「劇場版 『鬼滅の刃』無限列車編」ウェブサイト https://kimetsu.com/anime/


また、著作権侵害についても、日本における動画投稿共有サイトの著作権侵害が問題となった事例として、TVブレイク事件がある(※5)。

この事件は、JASRAC(日本音楽著作権協会) が、TVブレイクという動画投稿共有サイトを運営するジャストオンラインに対し、同社がサーバーにJASRAC管理の著作物を含む動画ファイルを蔵置し、ユーザーのパソコンに送信しているとして、著作権侵害(複製権と公衆送信権)に基づく差止めと損害賠償請求をした事件である。

TVブレイク事件では、誰が著作権侵害の責任を負うのかを「問題とされる行為の内容・性質、侵害の過程における支配管理の程度、当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し、侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として、侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべき」との基準を立てた。

つまり、プラットフォーマーも、様々な事情、特に違法コンテンツに対して削除権限があるなどコントロール可能な状態にあり、また、違法コンテンツから利益を得ていれば、自らが侵害行為をしていると法律上は評価されるということである。

そして、TVブレイクが侵害行為を誘発し、著作権侵害の蓋然性があることを認識しながら適切な措置をとっていないこと等を考慮し、サービス提供者であるジャストオンラインが侵害行為をしていたと評価した。

このように、権利の侵害を知りながら対応をしなかった場合には、直接模倣品を販売していないプラットフォーマーも責任を負う、というのが現在の実務である。

一般には、プラットフォーマーであるECサイト運営者は、出品者数、出品数を増やして顧客を増やしていくため、出品基準、模倣品対策を緩く設定する傾向は否定できない(※6)。

しかし近年、プラットフォーマーも模倣品に対する対策を講じている。インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)の報告書によれば、近年の自主削除件数は、増加傾向にあることが伺える(※7)。

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プラットフォーマーによる自主削除件数の推移 出典:知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)の報告書を元に筆者作成

例えば、アマゾンは、ブランド登録することにより、ブランド保護のためのツールが利用可能となる。

※5 知財高判平成22年9月8日判時2115号102頁〔TVブレイク事件〕。
※6 デロイトトーマツコンサルティング合同会社「我が国模倣品被害の課題分析及び課題解決のための方策検討に関する調査」(2018年3月30日)19頁参照
※7インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会(CIPP)「2018年度インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会報告書」(2019年3月12日)。ただし、この報告書でも各年度によって出品総数の測定を行ったプラットフォーマーの数に変動があるため、傾向を比較することは難しいとされている。
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文=木村剛大 編集=稲垣伸寿

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