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一人ひとりが生き方と向き合うきっかけに


だからこそ、「TERA WORK」は、単に仕事をする場と固定するのではなく、「自分と向き合う時間を提供すること」にも重きを置いている。

「コロナ禍で既存の価値観は揺らぎ、自分と向き合う時間はますます重要になっています。今回のコロナショックで、自身の働き方や生き方を問い直した人は少なくありません」

実際、利用者はパソコンを持ち込んで仕事するだけでなく、水彩画を描く人、内省する人などさまざまだという。

「『集中して仕事ができた』という声は多数ありますが、それだけではなく、『集中もリラックスもできて、自分と向き合う時間があった』という声ももらっています。

リモートワーク推奨で、仕事も、家庭も、プライベートも切れ目なくごった煮になっているからこそ、お寺のような、“日常にありながらも、日常と少し離れた空間”が必要なのかもしれません。

お寺で『自分と向き合う時間』を取ることで、働き方や生き方を考えるきっかけづくりができるのではないかと考えています」

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利用者とお寺とのマッチングや空間の提供からスタートし、今後は利用者が内省する機会を創出するためのプログラムを開発する計画もある。

「『寄り添う』と言っても、生き方をより良くするというのは、究極的にはその人自身が生き方を決めていくこと。お寺が生き方をすべてサポートするということではありません。一人ひとりが考えて決断していく上で、自身と向き合う時間をつくったり、働き方や生き方を考えるきっかけを提供していけたらと思っています」

お寺が変化していくための「場」でもある


現在、「TERA WORK」の加盟寺は、富西寺を含め静岡に2つ、北海道・山梨・和歌山が各1つの計5箇寺だ。TERA WORKの立ち上げを機に、「面識がなかったお寺からも、複数問い合わせをいただいた」そうだ。こうした「宗派横断的にお寺同士のコミュニケーションが生まれることも、この取り組みの価値」だと、水野氏は話す。

「お寺を次世代につないでいくにはどうすべきか、危機感を抱きながら、新たな動きを始めているお寺はたくさんあります。お寺によって状況も運営方法も、各地域によって求められることも違う。

連携して『同じことをしていきましょう』ではなく、結局は、お寺ごとに地域性や独自性を追求し、あり方を考えていくしかありません。『TERA WORK』で新たな挑戦をしていきたいお寺の方々がつながり、支えのような存在になっていけば嬉しいです」

TERA WORKを通じて、これまでと違ったかたちで地域と交流してもらうと同時に、各お寺の活動や思いをWebサイトを通じて発信し、業界内外横断的なコミュニケーションへと発展させていく。

すでに、加盟寺同士が考え方や経験などを共通できるコミュニティの場も運営している。

「お寺が変化していくと、地域の風景が変わっていく。そのきっかけを作っていきたい」。普段あまり訪れる機会のなくなったお寺でワークすることが、自身の生き方を、そしてそのお寺や地域までも変えていくきっかけになるかもしれない。


水野綾子(みずの・あやこ)◎出版社、ベンチャー企業の立ち上げなどを経験し、将来的に実家のお寺を継ぐため、2017年に家族で熱海に移住。熱海の企業と主に首都圏人材を「複業」でつなぐWebサイト「CIRCULATION LIFE」代表。2020年6月に「TERA WORK」を立ち上げる。

取材・文=福田さや香 撮影=栗原洋平

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