ワークマンは、目標を定めない、ノルマを決めない、残業をしない、社内行事をしない、といった「しない経営」を展開することで、4000億円の空白市場を発見し、10期連続最高益を果たした、いま旬の企業だ。
そんな急成長を遂げている同社が、常に意識している企業がある。世界最大のECサイト、アマゾンだ。
近年のワークマン飛躍の仕掛け人であり、10月に『ワークマン式「しない経営」』(ダイヤモンド社刊)も上梓した同社専務取締役の土屋哲雄氏は、アマゾンを「多くの小売業にとっての最大の敵」と表現している。
そして、多くのビジネスパーソンにとって興味深いテーマであろう、「アマゾンに負けない経営戦略」について、氏は同書の中で初めて公開した。
以下、同書から『巨人アマゾンに負けない「しない経営』について書かれた箇所を、一部転載して紹介する。
アマゾンが嫌がることを徹底的にやりきる
多くの小売りにとって最大の敵はアマゾンだと言っていい。
アマゾンに勝つことはできないが、少なくとも負けない戦略を考えなければならない。
弱者の兵法で、アマゾンが嫌がることを徹底的にやるつもりだ。
そこには3つの柱がある。
(1)定価でアマゾンに負けない
(2)配送費でアマゾンに負けない
(3)販促費をかけない
定価でアマゾンに負けない
天敵アマゾン対応の前提条件として重要なことは、アマゾンと同じ土俵に乗らないことだ。
そのためには、まず難しい課題だが、定価で負けないことである。
たとえば、One to Oneマーケティングに手を出すとコストばかりかかってしまう。
それより自社の強みで勝負する。ワークマンの場合は高機能・低価格製品と全国885の店舗網だ。
PB製品の場合、直接比較はできないが、類似製品であれば、定価で決してアマゾンに負けない。価格が同じならワークマンのほうが高機能だし、同等の機能ならば安い。
作業服でアマゾンができないことは供給保証だ。法人が作業服を一度選ぶと、通常5〜10年間、同じモデルを使い続ける。生地が廃版になる恐れもあり、材料や副資材ベンダーの保証も必要だ。これも徹底的にやりきる。
ワークマンの作業服は、アマゾン対策として10年間の供給保証をつけている。
7Lまでの大きな体型や横幅型の体型(柔道体型、ラグビー体型など)用の在庫を保証するのは大変だ。横幅型の体型の人が一人も入社しないこともある。最後にはかなりの廃棄が出る。