売れ始めると勘違いしちゃう
約束の4年間がまさに過ぎる頃、転機が訪れます。後に大ヒット番組となる「オールナイトフジ」の司会に抜擢されるのです。ここで人気が爆発。活躍の場が広がっていきます。
「考えてみれば、ワンチャンスだったんです。ところが面白いもので、いい方向に話が転がり始めると、どんどんその方向に転がっていく。これは発見でした。転機とかチャンスとか、誰でも人生に2〜3回はあると思う。それをつかむのは、とても難しいのも事実です。運も必要だし、タイミングも必要です」
そして、石橋さんは次に意外な言葉を続けました。
「芸能界だって、実力1割、運9割だと思うんですよ」
同年代のお笑いの世界にも、うまい人はいくらでもいたといいます。しかし、実際に生き残れた人は数人しかいませんでした。実力以上に、運が大きく左右したのです。
「ただ、運をつかむヒントはあるかもしれないと思うんです。たとえば、辛抱です。辛抱の先に何かが待っているかもしれない。『石の上にも3年』って言葉があるけど、ホント、昔の人は良いことを言ってる。これは何をしても言えることだと思う。努力も大事です。だって、運とタイミングがそろったときに自分に準備ができていないと、それに乗れないですからね」
運が9割。それまでは辛抱と努力──。芸能界で成功を収めた石橋さんの口から出てくるとは、思ってもみなかった言葉でした。
「世に出てくる人って、やっぱりって思うことはとても多いんです。彼らは、『なるほど』ということをちゃんとやってる。考えもつかないような努力をしてる。やってねぇヤツに限って、不平不満を言うんですよ。『こんな仕事、やってられない』とかね。これでは、何も手に入らない」
芸能界で長く活躍している人は、自分をプロデュースできる人だといいます。
「客観的に、冷静に、芸能界のなかに自分のポジションをつかんで、次にどこに進むべきか、その方向が見えている。逆にそれが見えなくなって、ふんぞり返ったりしだすと、もうこの業界から姿を消さざるを得ない。誰でも売れ始めると勘違いしちゃうんですよね」
当初、とんねるずもそうだったといいます。しかし、その勘違いの期間をどのくらい短くできるか。そうでないと、正しいポジションは見えてこないというのです。
「自分たちのときには、実は勘違いを見抜く暗示にいくつも出会いまして。たとえばクルマをようやく買えて、すごいマンションに住めたのに、なぜか駐車場がないとか(笑)。それで、憲武と、これはおかしいと」
そしてもうひとつ、運をつかむヒントを石橋さんから教わりました。それは、何のために夢を求めているのかをはっきりさせることです。
「愛する人を幸せにしたいとか、もっといい生活をさせてやりたいとか。私利私欲だけじゃダメですよ。いちばん大事なものを求める。そうすると、みんな努力するでしょ。そうやって頑張った人には、きっとご褒美が待っているんです。ちゃーんとね。神様って、そんなに悪い人じゃないんですよ(笑)」
成功することは簡単ではありません。しかし、成功し続けることはもっと難しい。それを実現した人はどんなことを考えているのか。そのヒントとは何か。素晴らしい解答を垣間見た石橋さんのインタビューでした。
連載:上阪徹の名言百出
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