新年を迎えたニューヨーク 不動産事情とワクチン接種から見える「今」

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固定資産税が高いニューヨーク市にあって、ビルのオーナーは、1階のテナントに年間の固定資産税のうち約40%を払ってもらうよう賃料の中に含めて按分している。しかし現況は、1階の路面店であるテナントからは賃料の減免交渉を受けるだけでなく、店自体を畳んでしまうことも多いため、空きが増えている。

加えて、上階のオフィスや住居のテナントからも賃料が入らなくなると、固定資産税を自腹で賄わなくてはいけなくなっている。固定資産税が払えなくなると、ビルの差し押さえということになり、ビル所有を諦めざるを得なくなってくる。そのため、テナントが家賃を払わなくてもいいとなると死活問題なのだ。

ニューヨーク州の商業不動産の賃貸契約は、店舗であれば10年は普通で、さらに5年、通算15年までの延長できる権利付きの契約が多い。契約の途中で閉店するのであれば、残存の家賃全額を支払うことが基本条項になっている。ただし、期間もこの契約条件も交渉次第で揺れ幅があり、契約解消に持ち込めるかどうかも交渉次第だ。日本のように残り1年分を払えば閉店後退去できるような条項にはなっていない。

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最近になって、ビルのオーナーが固定資産税の支払いも、ビル購入時の商業不動産ローンの返済も滞り、破産申請を始めているという話も聞こえてきた。裁判所が管財人を任命し、その管財人がビルごとオークションにかけ始めている。オークションでの価格は、当然通常のマーケット価格より下回るので、安く買えるチャンスではある。リーマンショック時にも同じようなことが起こっていたので、状況はここまで悪化しているのかとも思う。

マンハッタンでの賃貸可能なオフィススペースは、2020年11月には、アメリカがアフガン、イラク戦争に突入し景気が後退していた2003年以来の増加を見せた。これには、賃貸契約が残っているオフィススペースが、業務縮小のため、サブリースに出されているものも含まれている。

ニューヨーク市のビルは、法律でビルごとに使用目的が規定されている。類別すると、
1. 1階が商用で、2階以上が住宅用(1階が店舗、2階以上はアパート)
2. 1階が商用で、2階以上もオフィスとして使用可能(1階が店舗、2階以上はオフィス)
3. 1階からすべて住宅用(すべてアパート)
となる。法律で、日本のように1階から5階まで飲食店として使用するビルは許可されていない。

マンハッタンでは、新しい住宅ビルもまだまだ建築が続くなかにあって、合計約9万3000平方メートル分のオフィスス用途のビルを住宅用途にと、上記のようなカテゴリーを変更する計画案が進められている。
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文=高橋愛一郎

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