フィットネス機器への需要の高まりは、一方で、納品の遅れや顧客の苦情といった問題を引き起こしている。そうしたなかで、プリコーの「米国内での製造に関する大きなプレゼンス」は、より迅速な製品供給や、設計から出荷に至る「生産プロセス全体の制御」を後押しすることになるとペロトンは述べている。
プリコーは、米国のノースカロライナ州とワシントン州に、のべ62万5000平方フィート(約5万8000平方メートル)の製造拠点を抱えている。ペロトンはこれまで、米国内の外部の生産業者、および同社が2019年に買収したフィットネス機器メーカー、トニック(Tonic)の台湾生産拠点などの生産ネットワークに頼ってきた。
米ウェドブッシュ証券のアナリスト、ジェームズ・ハーディマンは、12月22日付のリポートでこう指摘している。「ペロトン製品への需要は増加の一途をたどっており、同社がこの需要増への対応に奔走していることは周知の事実だ。特に新型コロナウイルス感染拡大による混乱により、アジアからの貨物輸送が大幅に遅延している状況が、この問題に拍車をかけている」
「業務用機器への新規注文が皆無になっていることから、プリコーの生産能力はフル活用されているとは言いがたい状況にあると考えられる」と、ハーディマンは述べている。
ただし、米国内での製造拠点拡大が、この買収の唯一の理由というわけではない。公式ウェブサイトの記載によると、1995年に世界初のエリプティカル・トレーナーを発表したプリコーは、ペロトンに対して「フィットネス業界最大の業務用機器ネットワーク」を提供できるはずだ(なお、これはプリコーのロブ・バーカー[Rob Barker]社長による表現だ)。逆にプリコーは、集合住宅や企業、大学キャンパスなどで自社の業務用機器を使用する企業顧客に対して、ペロトンの「経験」を提供できるだろう。
2021年初頭を予定している買収手続きの完了後は、ペロトンのコネクテッド・フィットネス製品が、ペロトンがすでに展開している国々でプリコーの業務用製品を採用している顧客企業に対しても提供されると、両社は発表している。
金融サービス会社コーウェンのアナリスト、ジョン・ブラックレッジは12月22日付のリポートで、「この買収は、未開拓のエンタープライズ市場にビジネスチャンスが存在することを示すものだ」と論評している。