世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

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教育大国で知られるスウェーデンで、若者たちの精神不調が急増している。10~17歳で精神科医にかかったり、向精神薬をもらったりしたことのある若者の割合はここ10年で倍増したというのだ。

同国内でその原因を示す警告の書として社会現象となるほどの反響を呼んでいるのが、『スマホ脳』(新潮新書、アンデシュ・ハンセン著 、久山葉子訳)という本だ。スウェーデンの学校関係者はその内容に驚愕。著者への講演依頼が急増し、彼の提案する改善メソッドを現場に取り入れる学校が次々と現れた。日本でも翻訳版が刊行されるやいなや、あっという間に累計22万部のベストセラーとなっている。

本書は急増する精神不調の要因に、スマホの中毒性があると説く。一日に何時間も(時に10時間以上も)スマホに囚われた結果なのだ、と。むろん、スマホ利用者は世界中にいる。当然の帰結として、若者の精神的な不調は、日本を含め、世界中で爆発的に広がっているという。

本稿では『スマホ脳』の第三章より、スマホが脳の本来的な性質を意図的に用い、中毒性を生み出すメカニズムを紹介する。


「かもしれない」が大好きな脳


どうしてスマホがこれほど魅惑的な存在になったのか、その理由を知りたい場合には脳内のドーパミンに注目するといい。ドーパミンはよく「快楽」を感じたときに分泌される報酬物質と言われるが、実はそれだけではない。ドーパミンの最も重要な役目は私たちを元気にすることではなく、何に集中するかを選択させることだ。つまり、人間の原動力とも言える。

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報酬システムを激しく作動させるのは、お金、食べ物、セックス、承認、新しい経験のいずれでもなく、それに対する期待だ。何かが起こるかもという期待以上に、報酬中枢を駆り立てるものはない。1930年代の研究では、レバーを押すと餌が出てくるようにした実験で、ネズミたちは時々しか餌が出てこないようにしたほうがレバーを押す回数が多かった。いちばん熱心にレバーを押したのは、餌が出てくる確率が3~7割のときだった。

その20年後には、サルによる実験も行われた。ある音が聞こえると、ジュースが少し出てくるようになっている。サルのドーパミン量は、音が聞こえた時点で増加し、むしろジュースを飲んでいるときよりもずっと多かった。この実験でわかるのは、ドーパミンが快楽を与える報酬物質ではなく、何に集中すべきかを私たちに伝える存在だということだ。音が聞こえても、時々しかジュースが出てこないほうが、ドーパミン量がさらに増えることもわかった。2回に1回という頻度のときに、最もドーパミンが放出された。

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