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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

マイアミ・マーリンズのキム・アングGM(Alex Trautwig / 特派員 / Getty Images)

メジャーリーグ(MLB)144年にわたる歴史のなかで、このほど初めての女性ジェネラル・マネージャー(GM)が誕生した。バイデン新政権で、カマラ・ハリスが初の女性副大統領に就任することとも相まって、全米では女性の社会進出の象徴として大きな話題となっている

ジェネラル・マネージャーは現場の最高責任者であり、球団オーナーに対し、チームの成績について責任を負う。監督やコーチ陣を採用して、体制づくりをするのも仕事だ。

また、選手との年棒交渉にもあたり、球団と選手のエージェントとの間で「数字」をまとめていく役割も持つ。つまりチームの現場の全責任を担う重要な職務なのだ。

30年間、野球界に身を置く


これまで圧倒的な男性社会であったメジャーリーグで、このジェネラル・マネージャーの座に上り詰めたのが、マイアミ・マーリンズのキム・アングだ。彼女は当年52歳のアジア系アメリカ人。シカゴ大学で公共政策を学び、1990年にメジャーリーグのシカゴ・ホワイトソックスでインターンとして働き始めた。

その後、ニューヨーク・ヤンキースやロサンゼルス・ドジャースなどでアシスタント・ジェネラルマネージャーなども務め、上部団体であるメジャーリーグ機構にも身を置いてきた。つまり30年間、ずっとアメリカの野球界で働いてきたのだ。そのうち21年をメジャーリーグのチームで職を得ていたが、その間、3度のワールドシリーズ優勝も経験している。

マリーンズは、2017年からニューヨーク・ヤンキースの伝説のプレイヤー、デレク・ジーターが最高経営責任者(CEO)を務めているチームだが、アングは1998年から2001年の間、ヤンキースで彼と「職場」を共にしている。そのこともあってか、アングがジェネラル・マネージャーとなったのは、けっして話題づくりなどではなく、彼女の豊富な現場経験が、ジーターCEOに認められたからかもしれない。

従来、ジェネラル・マネージャーというのはオーナー側に近く、彼らに代わって球団のすべてのことを決めることが多かった。しかし、21世紀に入ってから、球団の「投資効率改善」の経営的側面と、現場での「成績改善」とのあいだに一線を画した方がいいとのトレンドが生まれ、ジェネラル・マネージャーの上に、「プレジデント・オブ・オペレーションズ」という経営職階の新ポジションをつくり、経営と現場の分離を進めることでチーム力の強化を図っている。

実際、2019年のメジャーリーグの名鑑では、30チームのうち12チームに、「プレジデント・オブ・オペレーションズ」という肩書が見られる。その意味で、まさに選手出身のCEOであるジーターが、現場の最高責任者に選んだのが、アシスタント・ジェネラル・マネージャーとしても活躍し、誰よりもチームというものを熟知していたアングということになる。

文=長野慶太

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