医療従事者のPTSD増加
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、膨大な数の医療従事者が限界まで追い込まれている。なかには、個人用防護具(PPE)を利用できない人もいる。医療従事者の燃え尽き症候群や自殺の割合は、すでにあらゆる職業で最悪の水準に達している。2021年には、新型コロナウイルス感染症患者の治療に起因する心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断基準を満たす医療従事者の数がさらに増えると予想される。
孤立した状態は、PTSDの症状悪化につながる傾向がある。医療従事者の多くは、患者の死に立ち会う唯一の人となり、患者が家族に別れを告げるための最後の電話をかけることもある。新型コロナウイルス感染症患者から言葉による暴力を受けたと報告する医療従事者もいる。
それに加えて、医療従事者たちは友人や家族から切り離されている。ウイルスを拡散しないために、別の場所で暮らしている人もいる。なかには、ガレージで生活している人すらいる。それに関連して、急増するPTSD患者を治療するための資金源も問題になっている。
2020年3月から4月にかけてノルウェーで実施された調査では、新型コロナウイルス感染症治療に携わる医療従事者の28%がPTSDの診断基準を満たしていた。現在はそれから7カ月ほどが経過しているが、心の傷になる症例に触れる期間が長くなれば、PTSDを発症する可能性も大幅に高くなる。
新型コロナによる認知機能への長期的な影響
新型コロナウイルス感染症から快復したと診断された場合でも、認知機能の障害が続くかもしれない。新型コロナウイルス感染症の快復者では、脳の実行機能のパフォーマンスに関する問題が見られている。これは、身体の炎症プロセスに関係している可能性がある。
また、これまでの知見によれば、どうやら脳の海馬は新型コロナウイルス感染症の影響を特に受けやすいようだ。海馬におけるそうした影響は、記憶障害やアルツハイマー病などの神経変性疾患の加速につながるおそれがある。
さらに、新型コロナウイルス感染症に感染していない人でも、認知機能への影響が生じている。隔離生活や、新たな作業手順、家族に会えない状況といったコロナ以後に生じている急激な変化によって、すでに認知症と診断されている人が、うつや不安、ストレス、攻撃性などを示す割合が増えているのだ。