アジアの巨大市場に狙いを定めるStockX
2019年に東京に初の拠点を設置し、さらに今回、香港の鑑定センターに新たな投資を行ったことで、StockXは、アジアの複数主要都市での事業展開に重点を置く方針をさらに加速している。
香港拠点に地域のハブとしての役割を託すことで、StockXは、中国、台湾、シンガポールの成長市場にサービスが提供できるようになった。さらに顧客に対しては、手数料の引き下げ、支払いのスピードアップ、送料の値下げなどのメリットを提供できる。
2020年第3四半期にアジア太平洋地域で前年同期比500%増という飛躍的な成長を達成したのちもStockXの勢いは止まらず、第4四半期に入ってこれまでに3つの鑑定センターを新たにオープンさせた。その中でも、成長著しいアジア市場の需要を満たすためのカギを握るとされるのが香港だ。
香港には、従来型の手法で限定版スニーカーの取引を行ってきた長い実績がある。悪名高いモンコック(旺角)のスニーカー街にある委託販売店で始まったこうしたリセールは近年、フェイスブック・グループやカルーセル(Carousell)など、オンラインのソーシャルメディア・プラットフォームやマーケットプレイスに取引の場を移していた。
海外の買い手にとって香港の最も魅力的な点は、その豊富な在庫と、税金がかからない点だ。さらにStockXは、透明度の高い価格決定ガイドラインを採用しているため、買い手は最も公正な価格で買い物ができる。
StockXが擁する鑑定人の大半は、「スニーカーヘッズ」と呼ばれるマニア層だ。香港のセンターに新たに採用された27人は、市中でスニーカー取引に従事してきた者や、個人の販売者、あるいは、ナイキなどのスポーツウェア・ブランドの従業員だった経歴を持つ者たちだ。
「我々が目指すのは、現代のカルチャーを生きる消費者向けの電子商取引プラットフォームでナンバーワンとなることだ」と、カトラーは述べている。
実際の需要は、地域によって違いがあるようだ。例えば、香港在住者はシュプリームを特に好む。その人気は、ナイキやジョーダン、アディダスといった著名ブランドをしのぐほどだ。
StockXのプラットフォームは、リアルタイムの価格トレンドを示す一種の指標としても機能している。カトラーも、同社がスニーカー取引のデジタル化分野でパイオニアであることに誇りを覚えている。
「我々はこの市場に、製品ベースの体験をはじめとする、まったく異なる体験を持ち込んだ。さらに、価格決定や買値・売値の提示について、透明性を導入した」
「この透明性が、我々のプラットフォームの最大の特徴だ。我々のカタログ内で取引を行っている商品に関しては、当社が価格の基準となるほどの信頼を得ている」
毎日、何千足というスニーカーが、StockXの鑑定人のデスクを通過する。同社は独自技術と基準により、99.95%という鑑定の正確性を実現している。これらのシステムにより、入荷した商品はその日のうちに、必要な手続きを終えて出荷されすとる。
新たな商圏に投資し、事業規模をスケールアップさせたStockXは、このホリデーシーズン、大量に押し寄せる最新モデル・スニーカーや価値あるコレクティブルズなどを、難なくさばくことができるだろう。