ビジネス

2021.01.18 07:00

超ユニーク、脱力系経営が拓いた4000億空白市場。ワークマンの「しない経営」に学ぶ


見せ方を変え、客層を変える


土屋氏といえば、2018年9月に新規参入した、一般向けアウトドアウェアを扱う「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」をヒットに導いた功績が名高い。

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WORKMAN Plus ららぽーと甲子園店(画像提供:ワークマン広報)

だが驚くことに、ワークマンプラスの参入にあたって、新たに開発した製品はない。ワークマン既存製品の「見せ方を変える」ことで、別の客層に販売する。そうしたワークマンらしい、頑張りすぎない方法で実現したのが、ワークマンプラスだった。

ワークマンは、高機能で低価格な製品を扱っている。作業系の製品は、とにかく機能性が重視され、デザインで買う人はあまりいない。

しかし、一般客向けに売る場合には、デザインが重要となる。そこでワークマンプラスでは、これまでワークマンにはなかった「マネキン」を置き、スタイリッシュな作業着をコーディネートして見せることで、違う客層に販売した。

店舗の見せ方も変えた。社員たちから出た意見はすべて取り入れ、看板や照明、製品パネル、香りや音楽など、変えられるものはとにかく変えてみた。

「一回で成功しようと思って高い目標を掲げると、かえって上手くいきません。社員にはとにかくストレスを与えずに、自発的にアイデアを持ち寄ってもらって、すべて実行する。ワークマンプラスも、出た結果に対してみんなで共有し、反省する。そうした教育の一環のつもりで、最初から頑張りすぎずに軽い気持ちで始めたら、意外と成功してしまったんです(笑)」

熱いファン、アンバサダーの意見は「丸呑み」


近年のワークマン飛躍を語る上でもう一つ欠かせないのが、「製品開発アンバサダー」(以降、アンバサダー)の存在だ。同社では現在、30名ほどのアンバサダーが在籍している。

ブログやユーチューブで同社製品を自発的に紹介している「熱いファン」たちに、自身で製品を開発し、紹介してもらおうと考えたのがきっかけだ。

アンバサダーの一人に、「狩女子」のNozomi(のぞみ)さんがいる。

猟師である彼女は、とにかく目立つ派手なデザインを好んだ。狩猟環境では、他の猟師から撃たれる危険を回避するために、目立つ必要があるからだ。

こうした特定の分野に詳しく、発信力のある人から出た意見は、ほぼ「丸呑み」して製品に反映している。その方が、社員が頑張って頭で考えるよりも、消費者が本当に必要としている製品を作ることができるという。
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文=長谷川 寧々 編集=石井 節子

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