国連機関が示した「翌年の展望」、2020年は史上最悪

アントニオ・グテーレス国連事務総長(Michael Sohn - Pool/Getty Images)

近代史上最悪といえる1年だと厳しく評価された2020年の終わり、国連(UN)は翌2021年について、「さらにひどい1年になるおそれがある」と警告した。複数の機関が、国連の創設以来、最悪の人道上の悲劇が起きる可能性があるとの見方を示している。

国連世界食糧計画(WFP)のデービッド・ビーズリー事務局長は12月初めに開かれた国連総会で、12カ国が飢饉に陥る「瀬戸際だ」と発言。2021年は「文字通り、壊滅的になる」との見方を示した。

また、新型コロナウイルスのパンデミックを抑え込むために各国がワクチンを我先に入手しようとするなか、貧しい国々がパンデミックの封じ込めに苦しみ続けることになることへの懸念を表明している。

ビーズリー事務局長はまた、「すべてのことに資金を提供することはできない…私たちは優先順位をつけなければならない。タイタニック号の目の前には、いくつもの氷山があるということだ」と述べている。

一方、国連のマーク・ローコック事務次長(人道問題担当)兼緊急援助調整官は、新型コロナウイルスによって経済的な打撃を受け、数百万人が貧困に陥っていると指摘。紛争で自宅を追われることや気候変動の影響で、悪影響を受ける人はさらに増えると警告した。

人道支援を必要とする人は2021年、前年比40%増の2億3500万人にのぼると見通しだという。

ローコック事務次長は11月には、2021年には“考えられないほど”に飢饉がまん延するおそれがあると述べ、紛争が起きる可能性もあるとの見方を示した。国連はそうした指摘を受け、世界の飢饉に対応するため1億ドル(約103億円)以上の拠出を決定した。

対象国は、アフガニスタン、ブルキナファソ、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、南スーダン、イエメン。このうちイエメンには、最も多い3000万ドルの拠出を決めている。

慢性的な食糧不足に悩まされてきたこれらの地域の多くは、新型コロナウイルスのパンデミックによって、さらなる状況の悪化に直面している。

パンデミックは2020年、世界の公衆衛生と経済のどちらにも痛ましいほどの被害をもたらした。米ジョンズ・ホプキンス大学は毎日、世界各国の感染者と死者数を公表している。だが、一部の国では検査数が十分とはいえず、無症状者も多いことから、実際の人数はこれらを大幅に上回ると考えられる。

世界保健機関(WHO)は10月の時点で、すでに世界人口の10%が感染した可能性があると発表している。

一部の国ではすでにワクチン接種が開始されたものの、米国で一般市民の多くが接種できるようになるまでには、まだ何カ月かかかる見込みだ。国によっては、米国以上に長い時間がかかるだろう。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、「ワクチンが開発されたというだけで、パンデミックが終息したわけではない」と述べ、そのように誤解する人がでてくることへの懸念を表明している。

気候危機の影響も


一方、2020年に米国に特に大きな影響を及ぼしたものには、気候変動もある。大西洋で発生するハリケーンには、発生順に名前が付けられる。2020年は記録を付け始めた1851年以降、発生数が最多にのぼり、用意していた名前では不足する事態となった。

また、西海岸のカリフォルニア州では、記録が残されている限り史上最悪の山火事が発生している。

編集=木内涼子

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