「求人する企業の採用担当者が、『あの会社のあの人が優秀らしい』という噂を直接聞き込む。その担当者から依頼されてわれわれが接触をし、仲介するというパターンです。そんなふうに『評判』を味方につければ、自ら転職活動をせずとも、次のキャリアがつながって行きます」
逆に社外ばかり気にしていて、社内で評価が高くないと「評判」にはならない。だからもちろん、手元の仕事に十全にコミットしつつ、人脈を作っていくことも不可欠だ。
「かつては営業職やマネージャーの人ほどビジネス社交に旺盛で、専門職の人、つまり外的エンプロイアビリティに長けた人や、社外でも活躍できるスキルを持った人ほど内にこもりがちで人脈をつくるのが苦手、という皮肉な傾向がありました。
しかし、最近は状況も変わってきていると感じます。とくに20代、30代のマーケッターやデータアナリスト、エンジニアといったスペシャリストの人たちは、同じ専門職のコミュニティを形成したり、セミナーに顔を出したりして、積極的に人脈づくりをを心がけているようです」
自分のキャリアは折々棚卸しするのが大事、とも志村氏は指摘する。
「ご自身の経歴書は3年ぐらいごとにアップデートするといいと思います。転職チャンスを前提にした『外向きの説明資料』としてだけでなく、『自分はこの間にこれだけ成長した』も見える化でき、セルフレビューとして活用できます」
逆にその結果、3年間、同じことを繰り返してきたな、と自ら判断したら、他のスキル取得へのモチベーションにすればいいともいう。
斡旋業者に登録している人材には接触しない
ヘッドハンティングする候補者をサーチする情報源は、(業務上の機密ソース以外は)意外にも一般的で、インターネットや書籍、セミナーなどだ。それらを基にして、自社のサーチャーと共同でピックしていくという。
「クライアントさんの意図とズレがあってはいけないので、候補者イメージを突き合わせる意味で、事前に綿密な話し合いをもします」
ちなみにそのリストの段階では、候補者の個人名や現在の所属先は出さない。
そして少なくとも志村氏自身は、いわゆる人材斡旋業者に登録している人材には、基本的にコンタクトしないという。
「割合の問題かもしれませんが、経験上、自分から転職をしたいという人材より、現職に120%コミットしていて転職どころでないという人材のほうが優秀だからです。少なくとも私には、自ら転職を希望する『転職顕在層』ではなく、転職希望は目下ないが、内容によっては検討しないでもないという『転職潜在層』から見つけたい、というこだわりがあります」
志村氏の話を聞きながら、デンマークで国内歴代最高の興行収入を記録した映画、その名も「ヘッドハンター」(2011年、モルテン・ティルドゥム監督)中のワンシーンが蘇った。有能なヘッドハンターである主人公ロジャー・ブラウンが、「自分で応募した時点で失敗だったな。評判を味方につけるべきだったのに」と候補者を諭すシーンだ。