上映に向けて春馬さんへのメッセージ広告で新聞を埋め尽くしたり、SNSで鑑賞を呼びかけたり…。自然に生まれて広がったファンのムーブメントは、大切な人との別れに伴う悲しみと向き合っていく、「グリーフワーク」にもなっているように思います。
エンドロールで泣きながら拍手
幕末から明治初期、大阪経済の礎を築きながら歴史に埋もれていた実業家・五代友厚の人生を描く映画「天外者」。筆者は初日の初回上映を、東京都内の劇場で鑑賞しました。女性が多い印象ですが、一人で来ている男性もいました。春馬さんが向上心を持って努力を重ね、磨き上げた役者のスキルと、人間的な魅力が詰まった映画です。
春馬さんの表情と、声の使い方は、実に豊かです。子役に囲まれて、やんちゃな笑顔。恋する目、優しさ。たくましさ、聡明さ。どの場面からも、未来への希望と、生きるエネルギーがあふれています。
坂本龍馬を演じる三浦翔平さんや、岩崎弥太郎の西川貴教さん、五代の妻・蓮佛美沙子さんも、物語に溶け込んでいて、春馬さんとの信頼関係が感じられました。激動の時代を象徴し、和装にまげ、洋装にハットと、多様な衣装も着こなしています。さらに、殺陣や、英語のスピーキングを披露。大事な人と別れるたび表現を変える泣きのシーンに、五代が憑依したような激しい演説にと、パーフェクトな演技を見せてくれます。
ラストは、五代の人生が春馬さんと重なり、寂しい気持ちになりました。でも、エンドロールが流れると拍手が起こり、劇場が温かい空気に包まれました。最後に、春馬さんへの感謝と追悼の言葉が映し出されると、ひときわ拍手が大きくなりました。マスクに流れ込む涙を、ハンカチで押さえる姿も見られました。
新聞をメッセージで埋めつくす
「天外者」の公開に先立ち、11月28日と12月5日の東京新聞は、春馬さんへのメッセージで埋め尽くされました。
東京新聞広告局の担当者に、取材しました。
「あるファンの方から、多くの人の目に止まる広告で盛り上げて、天外者の上映を迎えたいというお話がありました。通常は近しい人への誕生日お祝いなど、個人的なメッセージに利用いただく、T-Voice!という広告枠をご紹介しました。一コマ3300円です。
ファンの方がツイッターなどで呼びかけ、賛同した方が個別に申し込み、予想をはるかに上回るメッセージが集まりました。可能な限りのスペースをとらせていただき、11月28日は207枠、15段が1ページと7段2ページ。12月5日は225枠、15段が1ページと7段1ページ、5段2ページでした。これほどの規模は初めてです。掲載しきれない分もありました。新聞がファンの願いを叶えるお手伝いができて、嬉しいです」