歌詞データベースの「Genius」によると、200人ほどのヒップホップアーティストが、歌詞のなかでCash Appを引用しているという。Cash Appがカルチャーに敏感なうえに、与える精神にあふれていることも、慈善事業セクターの破壊にひと役買っている。ギビングUSA財団(Giving USA Foundation)によれば、慈善事業セクターは4500億ドル規模を誇っている。
ビジネスニュースサイト「カルチャーバンクス」によると、個人間送金アプリのVenmoやCash App、Zelleなどではどれも、寄付をする際のフリクション(摩擦、面倒)が排除されており、パンデミック中に人気が急上昇した。
米連邦準備銀行の調査で、米国人の40%はいざというときの蓄えが400ドルに満たないという驚きの窮状が明らかになるなか、Cash Appは毎週金曜日、ユーザーを対象に「Cash Appフライデー」と呼ばれる懸賞イベントを実施。希望するユーザーから抽選で選ばれた人に、デジタル送金で現金を直接配布している。
ヒップホップ・ビジネスサイト「Trapital」は2020年1月、ヒップホップアーティストのカーディ・Bとメーガン・ザ・スタリオンが、無作為に抽出されたツイッターのユーザー2000人に対して、Cash Appを通じて1人当たり500ドル、総額100万ドルを配布したと報じた。Cash Appが2019年に実施した同名の「Cash Appフライデー」では、配布された額が合計6万ドルに上った。
ラッパーたちは以前から、ファンたちとつながるひとつの手段としてフィンテックのプラットフォームを利用してきた。ヒップホップ界のインフルエンサーとその忠実なフォロワーたちによって、Cash Appの月間アクティブユーザー数が、2017年の700万人から2020年の3000万人に増えたのも納得できる。
多くの人は、Cash Appの個人ユーザーにお金を寄付することは、非営利団体に寄付するよりも直接的に役立つと考えている。フィンテック技術ソリューション企業OneZeroによると、他人に直接寄付をした人は、緊急性をその動機に挙げている。
そうした考えに至るのには理にかなっているのかもしれない。というのも、非営利報道機関「プロパブリカ」によると、米赤十字社は2010年、ハイチ地震を受けて、復興を目的に5億ドルの募金を集めたが、実際に建設された恒久住宅はたったの6軒だったからだ。ただし米赤十字社はこの報道に異議を唱え、募金はハイチ復興に大きく貢献したと主張した。
そうしたことが、個人間送金アプリのダウンロード数が急増し、3月から10月のあいだに94%増加した要因だと、アプリ情報プロバイダー「AppTopia」は伝えている。