だが、その激動の時代のなかにも、より力強い、よりデジタル化された未来に向けた希望と期待が存在している。バンキング業界では、そうした希望がこれまでになく顕著になっている。
あとになって振り返ってみると2020年は、バンキング、トランザクション、コミュニケーションが私たちの行動様式に変容をもたらした変化の1年ということになるかもしれない。この1年で、ビジネスをめぐる考え方や資金の管理方法が再考され、銀行家としての戦略上の優先事項が変化してきた。
アクセンチュアが、調査リポート「バンキング・テクノロジー・ビジョン2020」のために最近実施した調査によれば、銀行幹部の79%は、テクノロジーと人とをより人間中心的な形で結びつけるような、体験の抜本的な見直しが必要だと考えているという。
2020年に見えた希望の兆しのひとつは、バンキング業界で長らく先送りされていた変化が訪れたことだ。「銀行(バンク)」という単語は、時とともに名詞から動詞(バンキング)に変化し、人々が訪れる場所から、人々がする活動へと変わった。ここ1年で起きたパンデミックへの対応は、その変化をいっそう加速させた。
それに加えて、新たなデジタルツール、フィンテックの競争、変化するクライアントのニーズがある。金融機関の多くは、前進するために適応と組織の見直しを余儀なくされた。
金融分野の調査会社RFiグループによれば、パンデミックの影響で、いまや世界の消費者の71%は、デジタル・バンキングを毎週利用するようになっているという。KPMGリサーチの調査では、ロックダウンの結果、顧客によるデジタル・バンキングサービスの使用が急増し、多くの銀行でデジタルサービスの使用が50%増加したと同時に、新規ユーザーもおよそ20%増加したという。