スイスの老舗チョコレートメーカー、レダラッハ(Läderach)は12月10日、ニューヨーク市のミッドタウン・マンハッタンの5番街に、同社としては世界最大の旗艦店をオープンした。同社の通常型店舗の2〜3倍強となる約230平方メートルの広さを誇り、チョコレートづくりの実演や教室も行う予定だ。
レダラッハの米国内の店舗は、1年前に同じくニューヨークのミッドタウン・イーストのレキシントン街にオープンした1号店、11月にニュージャージー州のショッピングモール「アメリカン・ドリーム」内に設けた2号店に続き、3カ所目となった。
5番街店は同社にとって、記念すべき世界100店舗目でもある。また、今年はこれに先だち6カ国で計12店を新設しており、創業家3代目のヨハネス・レダラッハ最高経営責任者(CEO=34)によると、これは家族経営の同社が2004年に実店舗の運営に乗り出して以来、最速の出店ペースだという。来年にはワシントンD.C.にも出店する計画だ。
レダラッハはヨハネスの祖父がスイスで1962年に設立した。ヨハネスは「五感で体験するフィジカルなチョコレート体験」への需要があると現状を説明する。「人々はまだ実店舗を求めています。それはとても大切なものなのです」
実際、ニューヨークで観光客や通勤者が激減しているにもかかわらず、レキシントン街店の売上高は12月上旬までに、コロナ対策で政府に義務づけられた閉鎖前の水準の75%まで回復したという。
コロナ禍でスイーツが人気に
新型コロナウイルスはアメリカの小売業界にも大きな犠牲を強いた。商用不動産データを手がけるコースターグループによると、米国では2020年に主要な小売業者だけで40社超が経営破綻したほか、史上最多となる1万1000以上の店舗が閉鎖された。
ヨハネスによると、レダラッハでもロックダウン(都市封鎖)中にオンライン注文が急増し、米国売上高の半分を占めるようになったが、今後その比率は20%以下に下がる見通しだという。同社の場合、オンラインと実店舗を合わせた米国売上高は前年より増えている。
全米菓子協会(NCA)によると、消費者は「不確かな時代」に気分を上げたり、見方を明るくしたりしようと、キャンディーやチョコレートを以前よりも多く購入しており、なかでも高級チョコレートは業界全体の需要の牽引役になっている。3月15日から8月9日まで、米国の高級チョコレート売上高は前年同期比13%近く増え、キャンディー・チョコレート全体(3.8%増)の3倍強の伸びを記録した。
ヨハネスは「人々は自分をいたわったり、甘やかしたりしたがっている」と分析し、賞味期限が数週間の生チョコレートもヘルシーなライフスタイルを志向する若年層に訴求しているようだと話す。同社ではチョコレートポップコーンといった新商品でも、若い消費者を引き寄せているという。