LiDARメーカー「ルミナー(Luminar)」の創業者でCEOのオースティン・ラッセルは、数少ない例外の1人だ。光学の天才と評されるラッセルは、17歳でルミナーを設立した。
同社のナスダック市場への上場に伴い、ラッセルは世界で最も若いセルフメイドのビリオネア(遺産相続などではなく、自力で資産10億ドルを突破した者)となった。
「SPAC(特別買収目的会社)との合併により上場を果たし、さらにスケールアップする機会を得たことに大きなやりがいを感じる。私はまだ若いが、多くの血と汗と涙を流してきた。自分はとても幸運だ」と25歳のラッセルは、カリフォルニア州パロアルトにあるオフィスから参加したビデオインタビューで語った。
ラッセルは、ルミナーの発行済株式総数の3分の1に相当する1億470万株を保有している。その評価額は、12月3日の終値ベースで24億ドル(約2500億円)に達する。ルミナーは、8月にSPACの「Gores Metropoulos」との合併によりナスダック市場に上場する計画を発表した。Gores Metropoulosは、ビバリーヒルズに本拠を置く投資会社Gores Groupの関連会社だ。
合併により、上場前のルミナーの評価額は34億ドルに達した。ルミナーの株主には、ビリオネアのピーター・ティールや、ボルボのVC部門「Volvo Cars Tech Fund」らがいる。
ピーター・ティールも絶賛する天才
ペイパルの共同創業者であるティールは、2012年に自身が設立した奨学金プログラム「Thiel Fellow」を通じてラッセルを支援してきた。
Thiel Fellowは、ずば抜けた才能を持つ若者に対し、大学を中退して夢を追求することを条件に、10万ドルを提供するというプログラムだ。ティールは、ラッセルがスタンフォード大学を中退して2012年にルミナーを設立して以来、アドバイザーを務めてきた。ティールは、ラッセルが創業からIPOまで、高い持ち株比率を維持し続けてきたことを高く評価している。
「数十億ドル規模の事業を作り上げても、ビリオネアになれるとは限らない。ラッセルがあれだけの保有比率を維持できたことは、ファイナンスの観点から非常に素晴らしいことだ」とティールは話す。
ラッセルは、2018年にフォーブスの「30アンダー30」(世界を変える30歳未満の30人)に選出された経歴を持つ。ルミナーは、アルファベット傘下のウェイモや、GM傘下のクルーズなどの大手と競合するのではなく、車両からレーザー光を照射することで周囲の障害物を検知するLiDAR(light detection and ranging)を開発している。
LiDARは、自動運転車に欠かせないテクノロジーだ。ルミナーのライバルには、長年業界をリードしてきたベロダイン(Velodyne)や、新興企業の「エヴァ(Aeva)」が含まれる。両社とも、ルミナー同様にSPACとの合併により上場を果たした。ルミナーはこの数年、LiDARのプロトタイプを大手自動車メーカーに販売してきたが、最近ではボルボ・カーやダイムラー、インテル傘下のモービルアイから生産を受注し、今後の収益成長が期待される。