上川法務大臣がすべてに答えた。「性犯罪」が直面する本当の問題点

上川陽子法務大臣


「私としては被害者の方々のご意見をベースに制度改正も進んできましたが、まだまだ積み残された課題があると受け止めています。被害者の方は年齢や性別を問わず、赤ちゃんから障害のある方も含めて、本当にたくさんの方が声をあげられないこともありますので、検討結果を受けてしっかりとまた対応して参りたいと思っています」

日本では海外に遅れて2017年ごろからMe Too運動が広がり、被害当事者が声をあげるフラワーデモも開催されるようになった。この流れについて、上川大臣はどう感じているのだろうか。

「性犯罪や性暴力の問題は非常に根深く、国内外のMe Too運動などをフォローしますと、海外の動きからは少し時差がありましたが、なかなか声があげられない状況の中でここまできたなと感じます。日本のフラワーデモにつきましても、当事者の方々が勇気を出して声を挙げていただいたことで、同じ悩みを抱えた方々がSNSでも繋がり、声を掛け合って運動を進めてきたことは非常に重要なものでした。社会全体として見れば、まだ一部の声にすぎないという声もありますので、その流れを止めないようにしていくこと。そのためにも、刑事法の検討を進めています」

性犯罪刑法改正を巡ってはさまざまな論点があるなかで、特に各国より遅れをとっている「性交同意年齢」が13歳であることについてはどう受け止めているのか。

すると、ドイツで14歳未満、スウェーデンで15歳未満、カナダで16歳未満の例を挙げ、「この性交同意年齢というのは、現行法上は暴行・脅迫がなくとも強制性交等罪が成立する年齢です。性犯罪に関する検討会でもこの年齢を引き上げるべきかが論点のひとつとして議論されていますが、当事者や被害者の心理に詳しい専門家の委員の方から、子どもの性被害の実態を踏まえた意見をいただいており、検討を進めております」と答えた。

さらに「世界に比べて日本の現状をどう受け止めているか。議論は遅いと感じているか」と向けると、上川大臣はこう語った。

「やっぱり子どもの特性ですよね。何をされているかわからないくらいの年齢から、わかっているけれどもそれが実感として伴わない、などいろんなステージがありますので、やはりその特性を踏まえた上で細やかに検討していく必要があるのではないでしょうか。いずれにしても13歳というのは、私が母親であった実感としても非常に小さな子どもだと思いますので、検討会でよくご議論していただきたいと思います」

これまで法務省に設置された刑事法の検討会は9回実施しているが、今後について、上川大臣は「検討会の取りまとめを年度内に行うという形で設定しているわけではありませんが、なるべく迅速に対応していただきたいということでお願いしております。スピード感を持って進められるように私どももバックアップしていきます」と意気込みを見せた。
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文=督あかり 写真=帆足宗洋

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