コロナ禍で献血が減少中、英当局が性的指向による禁止措置を緩和へ

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ゲイおよびバイセクシュアルの男性の献血を一律に禁じる規則は、1980年代に発生し、LGBT+コミュニティーに壊滅的な打撃を与えたHIV・エイズ危機に伴って、世界各国で導入された。恐怖や偏見に根ざした反動的な政策だが、残念ながら多くの国では、こうした規制が有効だとする科学的根拠がないにもかかわらず、長きにわたって廃止されずに続けられてきた。

そして今、別の新たなウイルス(新型コロナウイルス)の感染拡大をきっかけに広まった危機感と恐怖心から、今度はこの差別的な規則が一部撤廃される動きが生まれている。

たとえば米国では、今回パンデミックによって血液が大幅に不足している。こうした危機的な状況を受けて規制当局は、ゲイおよびバイセクシュアル男性の献血に関する規制を緩和し、こうした男性からの献血を可能とする条件として定めていた「性交渉を行っていない期間」を、1年から3カ月に短縮する方針を打ち出した。

米国公衆衛生学会はこの方針について、「科学に基づくものではなく、他の国々の選択や恐怖心に追従しているように見受けられる」との見解を示した。同学会では、英国が先ごろ発表したものに似た「個別のリスクに基づいた適否判定プロトコル」を導入するよう提唱している。

英国のHIV・エイズ関連の慈善団体、テレンス・ヒギンズ財団の医療ディレクター、マイケル・ブレイディ博士は、今回の英国の方針転換についてこうコメントした。「献血に関して、より個別性の高いリスク評価アプローチへの転換が実現することを我々は歓迎する。英国は、献血をより多様な人々に開かれたものにする動きを先導している。今回の方針転換によって、今後は、ゲイ、バイセクシュアルなどの男性と性交渉を持つ男性も、その多くが献血が可能になるだろう」

ただし博士は、献血制度をできるだけ多様性があり、エビデンスに基づいたものにして、献血に参加する人を極力増やすと同時に、安全な血液供給を確保するためには、「さらに多くの取り組みが必要なのは間違いない」と付け加えた。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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