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2021.01.06 08:30

イノベーションを次々と生む、ロンドンだけではないイギリスのエコシステム

ロンドンに次ぐデジタルビジネスハブ「Bristol」の街/Photo by Martyna Bober on Unsplash


日本のエコシステムへの示唆


●産業界への示唆


英国では「より良いものは外から取り入れる、外部企業とタイアップする」ことは当たり前であり、多くの協業実績があるため、いくつか例を挙げる。

:F1チームが英スタートアップと共同でスーパーの冷却棚を開発
:英スタートアップの開発した3Dプリンティング技術を英仏航空機メーカーが採用
:英スタートアップのブロックチェーン技術を英電力企業が採用
:日・英・米企業が共同で進める自動運転実証で英スタートアップ企業が中心的な役割を果たす
:英スタートアップの水素燃料電池関連技術が独・蘭で採用
:英AIスタートアップ独製薬企業が創薬共同開発
:英バイオディーゼル開発企業が中東やアジアへ展開
 
また、大企業発スタートアップもエコシステムに取り込んで育てようとする動きが顕著だ。大企業で経験を積んだ人が起業するケースは、大学発スタートアップと比較しビジネスの持続性や雇用創出などの貢献度も高いことが多い。

●政府への示唆


英国から世界的なフィンテックスタートアップが生まれる要因の1つとして、自国の要といえる金融産業を政府自らが破壊し、イノベーションを起こそうとする姿勢がある。グローバルなルールメイキングにも積極的で、他国の規制機関と連携したグローバルサンドボックス構想を推進、既にアメリカの複数の規制当局も参加している。

デジタル化もスピーディーで、イギリスで働く際に必要なNIナンバーの普及により税金の控除や会社設立などはオンライン化。NHS(国民保健サービス)はアプリでの病院予約や自身の診察履歴の閲覧を可能にし、新型コロナウイルス感染症の追跡アプリも開発した。

●アカデミアへの示唆


オックスフォード大学内のOxford University Innovation(OUI)という組織は、大学の研究から生まれた特許技術の技術移転やライセンシング、大学からスピンアウトしたベンチャーの支援・投資、企業に対するコンサルティング等を行っている。

OUIに関わるオックスフォード大学の研究者は、研究とは別に、彼らの30%の時間を産学連携や外部へのコンサルティングに使うといったルールがあり、研究だけでなく、研究成果を活用した事業創出に本気で取り組んでいる。

oxford内でのディナーの様子
World Univeristy Rankingで5年連続トップになったオックスフォード大学は、企業との接点も非常に重視している。会員企業が大学の特許情報をいち早く入手できる仕組みも設けたり、この写真のように企業との夕食会を通して情報交換を行なったりしている。

今年1月1日の日英EPA発効により、益々関係が深まる今こそ、両国の産学官が一丸となって世界的インパクトのあるイノベーション創造を担うことが求められているのではないだろうか。

文=森若 幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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