ソフトバンクグループを立ち上げた孫正義氏。起業家であり、投資家でもある彼は、その動向が常に注目され、ニュースを目にしない日はないほどです。
本書は、孫氏の少年時代や米国で学んだ学生時代、経営者としてインターネットや携帯電話事業に進出するなど、型にはまらない経営者として歩んできたその半生を、著者である井上篤夫氏が20年以上かけて取材し、孫氏の生きざまをつづった一冊です。
私は、本が好きでよく読みますが、伝記にはまったく興味がありません。それは、本が人の生き方を読むためのものではなく、必要な知識を得るために必要なものだと思っているからです。
しかし、ある人に薦められて読んだ本書は違っていました。
読んでいると自然と心が熱くなり、こんなところで悩んでいてはダメだと背中を押してくれます。読めば読むほどパワーをもらえる本だからこそ、また読みたいと思うのでしょう。
例えば、会社の長期的なビジョンや、3年後、5年後に向けた具体的な戦略を立てようとしているときのこと。考えが行き詰まり、なかなか思い描いている未来をうまくかたちにできないときもあります。そんなときは大概、実現可能な内容に落ち着き、驚くような目標を立てることはできません。
しかし、孫氏は、自分ができる範囲の目標を設定することはなく、誰しもが考えつかない目標を立てて、その設定した目標に対して努力を惜しまず、最後には必ず達成します。
常に志を高くもち、「過去、自分と同じくらいの努力をした人はいるかもしれないが、自分より努力した人は世の中を探してもどこにもいない」と言い切れるほど、寝る間も惜しんで打ち込んでいくのです。
そんな孫氏の姿は、私に「経営者としての志」を再確認させてくれることはもちろん、「志に向かって、たった1ミリでもいい。昨日の自分より成長するのだ」という覚悟も再認識させてくれます。
また、読むたびに感じる、自分の器の小ささや焦りが、自らを奮起させ、未来への活力になってくれているように感じています。もっとやるべきことがあるのだと。
伝記が教えてくれることは多くあります。しかし、読むだけで人が成長できるわけではありません。大切なのは、失敗を恐れずに挑戦した末に得た、自分だけの「原体験」です。自身が経験した事でしか、自分を成長させることができないのです。
伝記でも、小説でもいい。挑戦へと奮起させてくれる一冊を見つけてほしいと思います。
こじま・ゆうすけ◎1984年、神奈川県生まれ。外資系自動車メーカー、広告代理店を経て現職。2015年データのアナリティクスコンサルティングと、解約防止ボットなどのウェブ接客により、広告効果の最大化をするMacbee Planetを設立。20年3月に東証マザーズに上場。