同社のソリッドステートリチウムイオン電池(全固体電池)は、わずか15分で容量の約80%の充電が可能で、通常の走行条件であれば12年間の耐久性能を持つという。サンノゼに本拠を置くクアンタムスケープのバッテリーはさらに、氷点下の気温でも十分に動作可能だとされている。
従来のEVのリチウムイオン電池は、気温が下がるとバッテリーの電解液の働きが悪くなり、充電に時間がかかり、氷点下では凍結するケースもある。さらに、クラッシュ時に火災につながる可燃性物質が含む場合もあった。
クアンタムスケープは先月、SPAC(特別買収目的会社)との合併を通じて上場を果たしたが、上場前にフォルクスワーゲンなどから3億8000万ドル(約392億円)を調達していた。同社の出資元には、ビル・ゲイツの財団や、ブレイクスルー・エナジー・ベンチャーズ、コースラベンチャーズ、KPCBなども名を連ねていた。
同社の取締役会にはVWの幹部も参加している。VWはクアンタムスケープと合弁会社を設立し、そこで製造するバッテリーを2025年に発売する車両に搭載する予定だ。クアンタムスケープは当面の間、VWに競争上の優位性を与えるかもしれないが、テスラの元CTOのJB Straubelや、元CFOのBrad Bussも同社の取締役を務めている。
クアンタムスケープCEOのJagdeep Singhは、現状では世界の新車の売上金額の3%以下でしかないEVのバッテリー市場が、いつか巨大な規模に成長すると見込んでいる。ブルームバーグのNew Energy Financeは、2040年までにEVとプラグインハイブリッドが世界の一般車売上の約35%を占めるまでに成長すると予測している。
一方で、リチウムイオン電池の開発者で2019年のノーベル化学賞受賞者のマイケル・スタンリー・ウィッティンガムは、「全固体電池を作る上での最大の課題は、低温でも300マイル(約482キロ)以上の航続距離を維持しながら、高エネルギー密度や急速充電、長寿命サイクルという要件を同時に満たすことだ」と述べている。
「今回開示されたデータは、クアンタムスケープのバッテリーがこれらの要件を完全に満たすことを示している」とウィッティンガムは、12月8日の声明で述べた。
しかし、この市場の競争は今後も熾烈なものになりそうだ。全ての自動車メーカーらが、バッテリーパックの密度を高め、小型化に向けて先を争っている。EVバッテリー市場では、韓国のLG Chemやサムスン、中国のBYDやCATL、日本のパナソニックらも激しい戦いを繰り広げている。