あなたはこれまでのプロジェクトマネジメントに違和感をもったことはないだろうか? 緻密に練られたコンセプトや戦略をもとに、最初に立てた目標に向けてチームでがむしゃらに頑張り、達成する。一見リーズナブルだし、いい話のように見える。
けれど、待ってほしい。そのとき、チームメンバーの瞳は輝いているだろうか。このチームで次も頑張りたいと思ってくれているだろうか。正直、難しい目標を果たした満足感よりも、言われたことに応え続ける、長くてつらい“作業”が終わったことに安堵する人も多いのではないだろうか?
“作業”が続くと人は徐々に疲弊していく。自分なりの型をつくり、数をこなすだけの人や、うまく怠ける人が出てくる。そして組織から活力が失われていく……。このやり方に欠けているものは何か。
それは、チームスタッフの「ハッピー」への目配せだ。私はプロジェクトマネジメントを一編のストーリーづくりとしてとらえ、いつもそのゴールにチームスタッフ一人ひとりのハッピーなエンディングを据えて成功している。名付けて「スタッフ主導型ハッピーエンド生成法」だ。
このやり方、通常のプロジェクトマネジメントに比べて初期段階はとってもイージー。ざっくりとしたコンセプトと目標を設定したら、まずはそれを「面白がってくれそうな人」を探し、集めるのだ。
メンバーが集まったら、次は個人分析タイム。さまざまなやりとりから、各メンバーの性格や強み弱み、モチベーションを分析。それぞれがこのプロジェクトでどんなエンディングを迎えたらハッピーを感じるかを推定し、そこからチームとしてのハッピーエンドを最大化させる目標を導き出していく。
つまり、あらかじめ決められた目標に向けて一人ひとりが自分を抑えて力を合わせるのではなく、一人ひとりのハッピーとプロジェクトのハッピーが最大限に重なる方法を見つけ出し、それに合わせてプロジェクトの目標そのものを変えてしまうのだ。
まだイメージが湧かないかもしれないので、「桃太郎」の話をこのメソッドに当てはめてみよう。目標は鬼退治で、プロジェクトリーダーは桃太郎。そしてその戦略は、道中で仲間をつのり鬼ヶ島に乗り込む、というもの。
しかしこの話、リアルに考えてみるとどうだろうか?途中で仲間になったイヌ、サル、キジは、きび団子という食べ物に釣られてついてきただけの仲間である。鬼ヶ島を目前に、彼らには恐怖と後悔の念が強く押し寄せている可能性が高い。
それでも鬼退治という目標にこだわり、突き進むのがこれまでのやり方。「スタッフ主導型ハッピーエンド生成法」では、イヌ、サル、キジの瞳を見つめ、何が彼らの本当のハッピーエンドかを思う。そしてプロジェクトの目標自体を切り替えてしまう。