AI融資のフィンテック企業、米Upstartがコロナ禍でも絶好調の理由

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個人向け融資を行うシリコンバレーのフィンテック企業「Upstart(アップスタート)」の株価は、12月16日のIPO当日に47%上昇し、時価総額は22億ドル(約2280億円)に達した。同社が、非上場企業として最後の資金調達を実施した2019年4月時点の評価額は7億5000万ドルだった。

元グーグル幹部のデイブ・ジルアードとアンナ・カウンセルマン、データサイエンティストのポール・グーによって設立されたUpstartは、7%から36%の金利で1000ドルから5万ドルの融資を行っている。顧客らは、クレジットカードの債務整理から結婚式向けの資金など、様々な目的で同社の融資サービスを利用している。

Upstartは貸し出しリスクの査定にAI(人工知能)を用いている。

今年3月に、新型コロナウイルスが米国を襲った際に、フィンテック金融業者の見通しは非常に厳しいものとなった。フォーブスは、投資家が資金を出し渋ることや、顧客の滞納の増加など、Upstartの未来には大きな困難が待ち受けているとの記事を書いていた。

Upstartは、信用スコアが平均以下の人々に融資を行っている。「恐ろしい事になったと思った」と、同社のCEOのデイブ・ジルアードは話す。

実際に、アップスタートの今年第2四半期の売上は、第1四半期から73%の減少となった。しかし、政府の緊急給付金が消費者の口座に振り込まれ、失業率が横ばいになると、業績は急回復した。

第3四半期のUpstartのローン取り扱い件数は、前年同期比26%増となった。同社の顧客は平均的なオンライン貸金業者の顧客より回復力が高く、支払いの遅延も業界平均が11.4%であるのに対し、5.6%という低い数字にとどまっている。

ジルアードは、これは他の貸金業者よりも「劇的に多くのデータ」を使用してAIベースのリスク査定を行った成果だと述べている。

他のフィンテック金融業者らは今年、苦戦している。GreenSkyやLendingClub 、Elevate、Oportunの株価は、2月以降にそれぞれ55%、30%、25%、8%下落した。

しかし、2020年9月までの9ヶ月間で、Upstartの売上は前年比46%増の1億4400万ドルとなり、500万ドルの純利益を計上した。同社は2019年に前年比80%の成長を遂げ、黒字転換を果たしていた。

Upstartが次に注力するのは自動車ローンだという。同社は最近、フロリダで自動車ローンの提供を開始し、2021年には他の州にも進出する計画だ。「自動車ローンの市場は、個人向け融資と同じくらい非効率だ。何百万人もの人々が車のローンのためにあまりにも多くのお金を払っている」とジルアードは話した。

編集=上田裕資

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