3. 素晴らしいストーリーには終わりがある
ストーリーテリングが下手な人はだらだらと話す一方で、上手な人は終わるべき場所を知っている。
恋人や妻・夫から、「今日はどうだった?」と聞かれた場合、尋ねられているのは朝起きた瞬間から1分1分をどう過ごしたかについてではない。それまでの12時間、あるいは最後にその人に会ってからの時間のハイライトとなるような出来事だ。
ダストは「そのストーリーの神髄となる部分を見つけ、そこをストーリーの終わりとすること」と述べている。
4. 素晴らしいストーリーには意外な展開がある
人は、予想していなかったようなことを聞くと、そのことを覚えやすくなる。スティーブ・ジョブズがよく、プレゼンを終えるかと思いきや「one more thing(もう一つあります)」と切り出していたのは、聞き手がプレゼンにちょっとしたマジックを求めていて、マジシャンはサプライズの達人であることを知っていたからだ。
私は過去8か月間で、ポッドキャスト配信者やブロガーと多くのインタビューを行なってきた。その際に、私の経歴のある部分についてのエピソードや、混沌とした今でも私がなぜポジティブかつ楽観的でいられるのかについての個人的なストーリーについて尋ねられることもあった。
私がよく語るストーリーは、自分の価値観を形成した父についてのもので、上記の4つの原則を満たしている。以下にそのストーリーを紹介しよう。
「私の父は、人格形成に重要な10代の5年間を第2次世界大戦の捕虜として過ごした。
父はイタリアに暮らしていた。イタリア軍に従軍していたわけではなかったものの、敵軍は若い男性らを連行し、強制収容所に送った。父は2度逃げようとして捕まった。そのたびに、自分は処刑されると思ったが、生き延びた。
父は戦後結婚し、母と共に米国に移住した。父は独学で工学を勉強し、母と一緒に、家族が良い中産階級の暮らしを送れるように努力した。私が父から学んだことは3つある。機会は自分で作ること、感謝の気持ちを持って生きること、明日は今日よりも良い日になるという希望を常に持つことだ」
このストーリーには、感情に訴えかける要素(苦難の克服)があり、時間も35秒と短く、話の終わりには教訓があり、予想外の展開も1つか2つある。
ストーリーは複雑なものにすべきではないが、意図的なものにすべきだ。この4つの原則に従うことで、意義のある会話にすることができ、最終的にはより大きな成功を収められる。