他人との比較をやめてラクになる 「妄想」の手放しかた

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日本のプロ野球、米メジャーリーグで活躍し、数々の記録を打ち立てた、あの天才・イチローの選手時代の言葉にこんなものがあります。

「努力せずに、なにかできるようになる人のことを『天才』というのなら、ぼくはそうじゃない。努力した結果、なにかができるようになる人のことを『天才』というのなら、ぼくはそうだと思う。人がぼくのことを、努力もせずに打てるのだと思うなら、それは間違いです」

プロ野球選手に必要な才能をすべて独り占めにしていた感さえある彼にして、努力なきところに、天才もまたなし、といっているのです。

禅にもこんな話があります。中国唐代に活躍した香厳智閑(きょうげんちかん)禅師にまつわるエピソードです。出家する前から聡明とうたわれ、博識を得ていた香厳禅師でしたが、師から与えられた公案(問答)の答えが見つからず、深く悩みます。

悩み抜いた香厳禅師は、いつまでも知識にとらわれている自分に気づき、そんな自分に失望して、書物をすべて焼き捨ててしまうのです。その後、禅師は昔から慕っていた、六祖慧能(えのう)の直弟子で100歳まで生きた南陽慧忠(なんようえちゅう)禅師の墓がある地に移り、墓守をして過ごします。

することといったら、毎日変わらない墓の掃除です。しかし、そんなある日、掃き掃除をしているとき、手にしていた箒は瓦のかけらを掃き飛ばし、それが竹に当たって音を立てます。

その音を聞いて、香厳禅師は悟りの境地に達するのです。このエピソードがもとになって生まれた禅語が「香厳撃竹(きょうげんげきちく)」。コツコツとたゆまず同じことをやり続ける、努力を続けることの大切さを教えています。

才能は生まれ持ったものかもしれません。しかし、「彼の才能が欲しい」「彼女の才能を分けてもらいたい」と思ったところで、いかんともしがたい。ですが、努力は自分の意志で誰にでもできます。

いとも簡単に営業成績をあげる“あいつ”のことなど気にしてないで、朝、出社したら得意先にあいさつでも、雑感でも、ちょっとした情報でも、ワンフレーズのメールを打つなんてことから「コツコツ」始めてみることです。

100日続けたら、どこかで“撃竹”の音が鳴って、ノルマをはるかに超える実績をあげているあなたが、そこにいるかもしれません。

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