ブルックリンの歩道で一時間半待ち。「陸上トラック」での大統領選投票

アメリカ大統領選、期日前投票をした有権者全員がもらえるステッカーを自分の胸に貼ったもの(撮影:新元良一)


投票所となるYMCAはバスケットのコートが数面あり、陸上競技のトラックも常設された巨大スペースで、何年か前、子どもがサマースクールで世話になった。係員に案内され、先日郵便で届いた証明書と引き換えに投票用紙をもらい、その陸上競技トラックに設けられた個別ブースで記入する。

大統領以外にも選挙があるため、縦長の投票用紙には書き込むところが多い。手袋をはめたまま、備え付けでなく、持参したペンで空白箇所を埋めたあと、係員が数人傍らで待機するATMを思わせる専用機に投入すると、画面に短い文章が浮き上がった。

Your ballot counted.

「あなたの投票は認められた」というそのひと言が、心に残った。自由と並び、民主主義を拠りどころにするアメリカ社会で、新米ながら自分もいち市民としてここに属している、そう感じた瞬間だった。

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(撮影:新元良一)

外での待ち時間と比べ、投票自体は10分も費やさなかった。ひと仕事終え解放された思いで表に出ると、歩道ではまだ大勢の人が並んでいた。

強い雨は続き、しばらくは止みそうにない。その隙間から一条の光すら降りてこないどす黒い雲は、選挙レースの最終地点はまだ遠いと告げているかのようだった。

(後編へ続く)

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新元良一◎1984年に米ニューヨークに渡り、22年間暮らす。その後帰国、京都造形芸術大で専任教員を務めるが、2016年末に再び活動拠点をニューヨークに移し、現在は米国から『WIRED』日本ウエブ版で海外の短編小説について、『TOKION』ウェブ版で欧米の最新ヒットソングについて連載中のほか、旺盛な表現活動を行う。主な著作に『あの空を探して』(文藝春秋)。ブルックリン在住。

文=新元良一

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