10年前「変人」と言われた農家が、いまメディアで取り上げられる理由

ハウス内で作業をする福山。妄想する時間は至福の時間だそうだ photo by 中山雄太


鍬のかわりにパソコン 思い込みを捨てる



ハウス内環境モニター

「父親に最初に与えられたのが、鍬ではなくパソコンでした。ほれやってみろと渡されたもののパソコンをつかって農業をやる前例がないのでとにかく好奇心のおもむくままにパソコンを触ってました」

農家としては一風変わったプレゼントを贈る父親の影響もあって、福山には農業とはこうあるべきだ、という思い込みがない。

福山に関しては好奇心を持ち続けている父親という身近なロールモデルがいたことも良かった。さらに、「〜べきである」というような押しつけがなかったことが彼の好奇心を加速して独自の手法を開拓するにいたったのであろう。

時代の潮流を見極め、好奇心をもって行動する



福山が編集撮影をしたタイムラプス映像

パソコンを与えられた福山は世界中から情報を収集した。ユーチューブにピーマンの育つ様子を撮ったタイムラプス動画を投稿するなど自らも発信した。他にも特許を申請するなど好奇心がおもむくままに実証実験を繰り返した。

「とにかく楽しいと思うことをやってみる。これが継続して専門性を高める一番の要素です。もちろん従来の農業手法も大事です。その上でテクノロジーをとりいれて効率化をはかり、余った時間を新しい技術の研究にあてています」

福山の名刺をみるとJAの理事をつとめる傍ら映像作家の肩書きもあり、多様な顔を持っていることがわかる。農業の単純作業をしている最中も新しいアイデアを考えて妄想している時間が楽しいらしい。「農家とはこうあるべき」という思い込みを最初から持っていない福山にとっては全てはアイデアの源泉なのだ。
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文=齋藤潤一、写真= 中山雄太

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