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「ある日、犬の姿を見ていたら、自然のままでいいんだよって教えられた気がしたんです。飾らずにありのままでいることの素晴らしさを感じたんですね。そうしたら、心にとても余裕ができて、仕事にしがみつくのに必死だったのが一転、勇気を持って前に進めるようになったんです」

それから、いとうさんには今までとは異なる人脈からオファーがくるようになり、仕事の調子も取り戻すことができたという。

「大学に入るときには、20代後半で味わった苦い経験もあって、違う人生を歩んでみようと思ったんです。1つのことにしがみついて余裕を無くすくらいなら、時には人のアドバイスに身を任せて、前に進むことを恐れないようにしてみるのが、人生を好転させるカギのような気がしています」

好転のカギは、モチベーションより「習慣化」


決断の後には変化がつきものだ。どのようにすれば、うまく人生を好転させることができるのだろうか。いとうさんは、こんなヒントを語った。

「芸能活動を続けながら、研究へのモチベーションをどうやって維持しているのかとよく質問されるのですが、新しいことに挑戦するとき、モチベーションに頼るのはあまり良くないと考えています」

例えば、子供に勉強へのモチベーションを与えるために、「○○を買ってあげるから次のテストは頑張ろう」と誘導することは、明確な動機付けではあるが、これは逆に言えば「モノがもらえなければやりたくない」という価値観を植え付けることにもつながってしまう。

大人になってからも同様なモチベーションに縛られると、それは「やらない理由」にもなってしまう、といとうさんは指摘する。むしろ重要なのは「自分のやる気と関係なく、毎日少しずつでもやり続けることにまずは集中すること」と語る。

「新しい生活のスタートを切るために重要なことは、いかに習慣化させるか、これに尽きると思います。こどもが自転車に乗ることを覚えるときも、何か明確なモチベーションがあって乗り方を習得するわけではないですよね。毎日の練習が習慣化していって、それがいつのまにか日常になっていく。これが、新しいことを始めるコツだと思います」

「くじけそうになることがあっても、前向きに楽しむことを忘れずにいれば、研究への興味は尽きない」と語るいとうさん。エクサウィザーズとの共同研究では、スクワットを推奨するロボットの実用化と普及に向けて開発を進めている。今後は認知症予防の分野にも関心を広げ、研究を「壮大な趣味」としながらも、さらに探究していきたいと語る。「頑なだったあの頃」とは異なり、女優でありながら、研究者の道をも軽やかに歩み続けている。


好転のカギは、モチベーションより「習慣化」だと語る

文=渡邊雄介 編集=督あかり 写真=小野田尚武

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