ブラジルの成長は依然として低調
ブラジルの国内総生産(GDP)は第3四半期に大きく回復したが、前期比7.7%増で、コンセンサス予測の8.7%増を下回った。第2四半期には、GDPは9.6%減少していた。
ブラジルの第3四半期GDPは2020年で最高となり、過去最大の伸びを記録したが、これはおもに、ブラジルの最重要都市におけるビジネス制限と小規模なロックダウンにより生じたきわめて低い景気の底から脱したことに起因している。
供給面を見ると、工業セクターが14.8%、サービスセクターが6.3%増加した一方で、農業が0.5%減少し、0.9%増という市場予測を裏切る結果となった。
需要面では、GDPは全体的に増加した。投資はこの四半期で11%増加し、個人消費は7.6%、財政支出は3.5%増加した。
同時に、ブラジル地理統計院(IBGE)は、2019年のGDP成長率を1.4%に修正した(以前は1.1%)。
だが、ブラジルの年末時点でのGDPに関しては、それ以上はよくならないだろう。
TSロンバードは、2020年のGDP成長率をマイナス4.5%と見ている。
TSロンバードのブラジル担当エコノミスト、ウィルソン・フェラレス(Wilson Ferrarez)は、「第3四半期の大幅な回復は、おもに『コロナバウチャー』によるものだ」と述べている。コロナバウチャーとは、2020年に米国で支給された経済支援のための一時金と同じようなものだ。
ブラジルでは、そうした助成金が毎月支給されていた。コロナバウチャーの支給は、新型コロナウイルス関連の経済支援対策の重要な要素であり、GDPのおよそ8%に相当する。
最後のポイントは、ブラジルの消費者が出費を控えているのは間違いないという点だ。最近の数字でも、四半期の伸び率は9.8%で、まだ予想を下回ることが示されている。ブラジル国民は依然として、万一に備えて貯蓄している。対GDP比の貯蓄率は17.3%に跳ね上がった。これは、ブラジルが「通貨戦争」のさなかにあった2013年以来の最高水準だ。当時はレアル高が、通常以上の貯蓄を後押ししていた。
ブラジルのこの貯蓄率からすれば、パンデミックが過ぎ去った際には、抑え込まれていた需要の回復により、ボベスパ指数が少なくともほかの新興国市場に並ぶ水準になる可能性もあるだろう。
「コロナバウチャー」プログラムが月300レアルに減額されたにもかかわらず(以前は600レアルだった)、ブラジルの2021年は、「正常に戻る途上」の1年間になるだろう。現時点では、ほとんどの投資家にとっての「正常」が戻ってくるのは2022年になる公算が高い。
世界的な資産運用会社ナティクシス(Natixis)の調査によれば、機関投資家の52%前後が、2021年の新興国市場における株のパフォーマンスは先進国市場をしのぐと予想している。とはいえ、機関投資家のほとんど(86%)は、新興国市場に投資するなら投資場所を選ぶ必要があると考えている。
ブラジルが後れをとっているいま、債券市場が適切になれば、さらに、ブラジルが他国よりも速く浮上すれば、現地通貨が強くなり、証券投資家を後押ししてくれるだろう。金利が3%、さらには4%になっても、ブラジル株にとって逆風にはならない。その金利でも、歴史的な低金利に近いことに変わりはないからだ。